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須磨区

”普請”で古民家再生「ハタ」〜地域の人々の交流を紡ぐ〜

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「壊すにも残すにもお金がかかる」そんな“厄介者”となっていた古民家が、地域の新しい居場所へと生まれ変わり、「ハタ(須磨区多井畑山神)」として10月12日(日)にオープンした。
 「ハタ」は、多井畑にある古民家。持ち主の親戚であり若き建築家の西谷聡汰さん(umiyama design lab主宰)が発起人となり、空き家を多様な仲間とともに再生させる参加型の「多井畑プロジェクト」を立ち上げ、1年半をかけてコミュニティスペースを誕生させた。
 「ハタ」は1995年の阪神・淡路大震災で家屋の基礎が歪み、庭も荒れ放題となっていた。業者に庭の手入れを頼んでも扱いづらいと断られ、処分にも費用が掛かる状況で、管理をしていた伯母夫婦にも大きな負担となっていた。大学院で建築学を学んでいた西谷さんは「壊すのではなく、地域のために活かしたい」と再生プロジェクトを発案。建築を学ぶ中で「地域の問題は住民の手で解決すべき」と考え、同プロジェクトで目指したのは地域の人とつくる「普請」のスタイル。これからの公共空間のつくり方を模索したいと話し、賛同する仲間を募って活動をスタートした。
 毎週日曜に作業日を設けると、散歩中にふらりと立ち寄る人や、手伝いに加わる人が数珠つなぎに増えていった。「ありがたいことに、人が人を呼んで手を貸し、知恵を出してくれた」とメンバーの中本智子さん。
 中本さんは多井畑の竹林保全活動を通じてプロジェクトを知り、活動に加わった。バイオジオフィルター(*)を使った台所排水システムを担当したが「完成ギリギリに基材が足りない!と絶望したことも」と苦労を振り返る。ほかにも、デザイン、施工、食や子育てなどさまざまな専門性を持ったメンバーが引き寄せられるように集まった。地域の参加者も多世代にわたり、協働によって心地よい空間が生まれた。授乳室やスタンディングデスクは参加者の声から採用された。
 オープンした「ハタ」は「イマ」「ドマ」「ニワ」「サギョウバ」のオープンスペースと、「ショサイ」「ダイドコロ」「ハタケ」「オミセ」の予約制エリア(本格的な利用開始は12月より)からなり、オープンスペースは公園のように立ち寄れる。ミミズコンポストや堆肥枠など、自然と暮らしを結ぶ仕組みも導入し「循環する暮らしを感じてもらえたら」と、中本さん。
 西谷さんは「現代は便利さを追うあまり、まちの居場所が減っている」と発起の想いを語る。かつては家の勝手口が開き、大人が子どもに遊びを教え、人が自然とともに育つ環境があった。今では人とのつながりが希薄になり、不登校児童が増えるなど、子どもたちの居場所も不足している。その現状をただ憂うのではなく、近隣同士が手を取り環境をつくっていく試みという。
 「誰もがふらりと立ち寄れて、挑戦ができ、受け入れられる場が必要」と西谷さん。「ハタ」は、いつ来ても、何をしても、何もしなくてもいい場所。夏には庭の竹を切り流しそうめんを食べ、秋には多くの実をつけた栗で渋皮煮を作った。壊すはずだった古民家は、地域の中で再び息を吹き返し、暮らしを育む拠点として交流を紡いでいく。場を活用したアイデアも歓迎しているので気軽に足を運んでほしいと西谷さんは呼びかけた。

(*バイオジオフィルター)濾材を充填した水路に植栽を施し、微生物・濾材・植物の働きにより排水中の窒素等を浄化する


左から赤木さん、西谷さん、中本さん

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