垂水図書館 垂水駅前広場にリニューアルオープン

9月30日(火)、垂水駅前東広場に新設された垂水図書館(垂水区日向)の開館記念式典が開かれ、リニューアルオープンを待ちかねた多くの住民が訪れた。
レバンテ垂水2番館の1階にあり、およそ30年にわたり地域住民に利用されてきた垂水図書館が、この度垂水駅前広場に新設された。建物外観は特徴的な多面体で、どの角度から見ても正面で裏がなく、すべての方向に向けて開かれているというもの。県内産の木材も多く使われ、温かみも感じられる魅力的なデザインとなっている。延べ床面積は686㎡から2200㎡へ、本の数は9万冊から12万冊へ、座席数は68席から316席へと大きく変貌を遂げた。
垂水活性化プランの目玉のひとつである新図書館のコンセプトは、「人と本のみなと~生涯の学びを支える情報拠点~」。地域の情報拠点として、本が集まり交流を育む「港」のような、ゆっくりと本に親しめる心地良い滞在型の図書館を目指している。
式典には久元喜造市長、須磨区出身の棋士で十七世名人の谷川浩司さんも駆けつけた。久元市長は「前の図書館は狭くて本も少ないと改善の要望をいただいていました。今回は街の中で学習できるスペースがほしいという中高生の声を取り入れ、座席スペースもゆったりと取っています。4階の屋上ひろばからは垂水の海や淡路島を眺めながら読書ができるスペースもあります。たくさんの皆さんに思い思いの豊かな時間を過ごしてほしいです」と挨拶があった。谷川さんは「5歳の時に将棋を始め、百科事典を見ながらルールを学びました。ネットやAIの時代ですが、小さい頃から本を読むことで記憶力・思考力・読解力が育まれると思うので、お子さんにもぜひ図書館を利用してもらいたいです」と話した。
3階の児童書のフロアにはカーペット敷きの「おはなしひろば」が備えられている。
絵本の読み聞かせやお話会を想定した小高いステージがあり、本の内容によって雰囲気を変えられるよう照明は3色に切替可能。カーテンは海にいかなごを模したデザインが施され、垂水らしさが表現されている。おはなしひろばの反対側にある学習室は静かな空間で学習に集中できるよう壁とガラスで仕切って防音効果を高めている。毎週木曜15時半から、乳幼児への読み聞かせ会を開いているグループ「かものはし」の代表の野口秀子さんは「どんなスペースでお話しさせていただけるのか、楽しみに見に来ました。とても素敵な場所でビックリです」と喜んだ。
2階の一般書フロアは明るく心地よい大空間。書架は温かみがあるクラシックなものが採用されている。雑誌コーナーのすぐ隣にはバスの行き来を見ながら読書でき飲食も可能な「バステラス」がある。1階部分は一般車が使用できるロータリーで、免震装置を備えた20本の太い柱が配されている。この柱が建物の脚のようでもあり外観を軽やかに印象づけている。
図書館の設計者の一人、株式会社タトアーキテクツの島田陽さんは、既存のさまざまな図書館を参考にしたり、司書の利便性を考慮したりと始まった設計から約5年、ようやくこの日のオープンを迎えたと話す。垂水区塩屋出身の島田さんは、父親が海事書を取り扱う元町の「海文堂書店」を営んでいたことから、幼少期から本とは縁深い。「100年後にも古びないことを目指しました。フロアの奥に進むと本が迎え入れてくれるような配置にしています。バスを待つ間など気軽に利用して、たくさんの人に立ち寄ってもらえたらうれしいです」と穏やかな笑顔で語った。


