公共交通フォーラム(なでしこ芸術文化センター)

9月14日(日)、なでしこ芸術文化センター(西区美賀多台)で「公共交通フォーラム~だれでも・いつでも・どこへでも~」が開催され、約80人が参加した。(主催/神戸市)
高齢化率が高い西北神地域を中心に地域交通の抱える課題と今後について、ともに考えていく契機とするため開催された同フォーラム。8月には北区と長田区で開かれ、今回が3回目となる。全3回とも久元喜造神戸市長がファシリテーターを務めた。
最初に市の担当者から公共交通の現状について説明があった。国内において鉄道やバスの公共交通の持続的な運行が難しく、神戸市においても鉄道の減便や路線バスの休廃止が起こっており、地域の移動確保が大きな行政課題となっている。
その背景には①利用客が減っている②運転手が足りない③コストアップ、の3つの課題が挙げられる。西区でも今年、バスの運転手不足が深刻化し児童が通学で利用する路線バスが休止となった。
パネルディスカッションでは「バスの路線を維持していくにはどうすればいいでしょうか」と問い掛ける久元市長。流通科学大学経済学部の長谷川哲郎准教授は「撤退する背景には便利な車を使う私たちの振る舞いもある」と指摘。西区月が丘に自宅と職場がある岡本万希(かずき)さん(合同会社暁代表)は「まずは人が集まる仕組みを作る。その結果、公共交通を利用するという形を目指したらいい」と話した。
久元市長から「バス停の近くに自転車置き場があれば便利という声を聞きますがいかがですか」とバス停から自宅までが遠いという「ラストワンマイル」移動について呼び掛けた。「バス停の間隔を短くする」といった声も上がったが実際には厳しく、駐輪場のスペース確保など新たな課題もあるが公共交通利用にも繋がる。
学園都市近郊の大学に通う学生らのコミュニティ「学園都市School Assembly(スクール・アッセンブリー)」はシェアサイクル実証実験による取り組みを紹介。4つのサイクリングコースを試走して気付いたという「住宅街を離れると段差が多く、自転車専用道路など安心して走れる道が少ない」、「高齢者や身長に合わせた自転車があると利用しやすい」などの改善点を挙げ、新しい公共交通としてシェアサイクルを広げていきたいと語った。
また公共交通が行き届かないエリアに関しては地域が主体となり、運行事業者・神戸市と協働して新たな地域コミュニティ交通を立ち上げる「神戸市地域コミュニティ交通支援制度」に取り組んでいる。
西区櫨谷町では昨年11月から地域コミュニティ交通としてデマンド型乗合タクシー「すこやかバス」の本格運行を実施。櫨谷町連合自治会会長の後藤茂さんは「3~5年後の櫨谷町の姿を考えるとデマンド交通が必要だった。高齢者の方に楽しく乗ってもらい、さらに利用者を増やしていきたい」と話した。岡本さんは「相乗り文化を拡大していき、地域住民同士の相互扶助という解決策が求められている」と話し、アプリの活用でコストを掛けずにできるのではと提言。長谷川准教授は「路線バスの採算が取れ、皆さんが自由に動ける本数を走らせる街を目指し、それぞれが率先して活動してほしい」と話した。
久元市長は「予算の関係上、一斉には無理だがバス停に屋根を付ける。神戸電鉄粟生線の活性化に取り組む」とし、「全3回のフォーラムで各地域の意見をいただいたので、しっかりやっていきます」と力強く語った。