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種子が消えればあなたも消える ~種子と私たちの素敵な関係を考える~

2月25日、神戸友の家(中央区)で「種子が消えればあなたも消える~種子と私たちの素敵な関係を考える~」と題した講演会が開催された。講師は龍谷大学経済学部教授・農村開発研究者の西川芳昭さん。友の会会員を中心に139人が参加した。 (主催/全国友の会近畿部 後援/神戸市教育委員会・婦人之友社)

 

1930年、「婦人之友」愛読者を中心に全国各地に友の会が誕生。健全な家庭からよい社会をねがい、家庭生活のさまざまなことを学び合っている。主催の全国友の会近畿部は、農業生産者の会員に合わせた農閑期の毎年2月に「近畿部農産物ネットワークの集まり」を開催。講演会などを通して生産者と消費者ではなくともに生活者という立場で、命を支える「食と農」について学んでおり、今回で6回目になる。昨年4月に主要農作物種子法(種子法)が廃止されたことから、今回のテーマとなった。

 

西川さんは講演会の冒頭で「食料主権」をキーワードとして挙げた。基本的人権の一部にあたる私たちの食への権利であり「自分たちが食べたいものを食べる、あるいは自分たちが作りたいものを作る権利」が、ないがしろにされていると伝えた。例として、青果物をスーパーマーケットで購入している人は7割で、そのうち6割を大手2社で購入している。つまり我々は自分で食べたいものを自分で選んで食べている気になっているだけで、実は企業が買わせたいものを買って食べていると警告した。

私たち日本人が当たり前のように食べている穀物や野菜は海外からもたらされたもので、日本原産のものはフキ、ミツバ、ウド、ワサビ、アシタバ、セリなどごく僅かだけである。長い年月をかけて海を渡り人間が育て改良し、命をつないできた〝種子〟を守るということは、民間企業などが種子を独占することなく分かち合い、譲り合い、誰もが利用できることが基本であると話した。  日本国内においても種を守る新しい取り組みが現れてきている。広島県農業ジーンバンクによる「種子の貸し出し事業」や、長野県での伝統品種におけるハイブリッドの利用、14種の京野菜品種を栽培し、種子を貯蔵している京都府立桂高校の活動など6事例を紹介した。種子法廃止を機に私たちがすべきことは、農家・消費者と公的機関が一緒になって、自由に自分たちの食べたいもの、作りたいものを選べる、新たな社会システムづくりだと提言。実現のためには農産物の価値がわかり、正当な支払いをする消費者が増えることが必要だと訴えた。政府や制度に頼るのではなく、身近なところで丁寧に種を採り、作物を作っている人たちとともに生きていくという考え方や行動が大切だと締めくくった。

新田愛子さん(須磨区月見山)は「野菜を購入するときなど、ついつい値段を見て購入を決めていたが、今一度立ち止まって、自分の行動を考える機会となった」と話した。

※種子法とは… コメや麦、大豆といった主要作物について、優良な種子の安定的な生産と普及を国が果たすべき役割と定めた法律。

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