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地球を救う!?増やせ、水中の森~ブルーカーボンと世界初の淡水カーボン~

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3月11日(火)に「地球を救う!?増やせ、水中の森~ブルーカーボンと世界初の淡水カーボン~」が中央区文化センター(中央区東町)にて開催され、オンライン配信視聴者を含め100人以上が参加した。

2015年に開催された気候変動問題に関する国際的な枠組みを決めるパリ協定で、日本は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目標にしている。カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収・除去量を等しくし、全体でゼロにすること。温室効果ガスは地球温暖化を引き起こす気体で、おもに二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン類などがある。なかでも二酸化炭素は大気中にふくまれる割合は低いが、もっとも温暖化への影響が大きいといわれている。
近年、二酸化炭素の重要な吸収源としてブルーカーボンが注目を集めている。ブルーカーボンとは、海藻などの藻類や海洋生物が光合成により海に溶け込んだ二酸化炭素を吸収することで、海底や深海に蓄積された炭素のこと。神戸市では各地でブルーカーボンの取組を推進。干潟での藻場づくりや、子どもたちへの環境学習など地元の漁協関係者や企業と連携して活動している。

2021年には、市内で初めてブルーカーボン関連の講座を開催し、今回で3回目となる。当日の講師はジャパンブルーエコノミー技術研究組合理事の神戸大学・信時正人客員教授、神戸大学大学院工学研究科・中山恵介教授、静岡大学理学部・久保篤史講師、九州大学大学院比較社会文化研究院・渡部哲史准教授の4人。ブルーカーボンの現状と未来や課題、そして世界初の研究となる淡水カーボンについてのシンポジウムが行われた。

信時教授はかつて横浜市の職員だった頃にブルーカーボンの活動を始めたが、当時はまだ認知度が低く、理解が得られず補助金もなく苦労したと話した。今回の参加者のように、ブルーカーボンに興味を持つ人が増えてきたことはとてもうれしいという。信時教授はブルーカーボンに関する国内外の動向をグラフで説明。ブルーカーボンの取り組みを行わなければ、今世紀末の全世界の経済損失はGDP比で5%以上になるという。また、企業が温室効果ガスの排出量を削減した結果をクレジットとして発行し、企業間で売買するカーボンクレジット制度の仕組みについてや、世界での取引状況、認定状況などを解説した。

中山教授はブルーカーボンのなかでも、世界で初めて淡水カーボンに注目し研究している。琵琶湖や愛媛県西条市のため池、台湾の湖での実験の過程や多様なフィールド観測の様子を紹介した。久保講師は温室効果ガスのひとつ、メタンに着目し、北海道の湖での研究の結果を紹介。水生植物場における温室効果ガスの全体量の状況や、ガスの測定方法の課題について話した。

渡部准教授は、ため池管理の状況と課題から見た淡水カーボンについて解説。淡水カーボンで大きな役割をもつため池の数は、兵庫県が国内最多。けれど、活用されているため池とそうではないため池の差が大きく、今後淡水カーボンの利用などで活用するためには地域の継続的なサポートが必要だと述べた。

神戸市では藻場が存在する、もしくは、藻場が創出できる可能性がある場所のポテンシャルマップの作成を行っている。また、漂着する海藻をブルーカーボンとして活用を検討。須磨海岸など市内の海岸で海藻が大量漂着して遊泳の妨げになったり、景観を損ねたり、悪臭発生のもとになっているので、有効利用するためのプロジェクトを実施しているという。
神戸市環境局自然環境課の野坂翔馬さんは「神戸の持つ資源や特性を活かして、市民・事業者・行政と協力してSDGsを実現したい」と話し、ブルーカーボンの取り組みを神戸市として続けていきたいと話した。

神戸市のブルーカーボンへの取り組みについて→
https://www.city.kobe.lg.jp/a66324/business/kankyotaisaku/ondanka/blue_carbon_index.html

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