全国写真洗浄フォーラム
3月16日(日)、神戸北野ノスタ・ステラホール(旧北野小学校講堂・中央区中山手通)にて、災害で水や泥を被り汚れた写真を洗浄して持ち主に返す写真洗浄ボランティアについて考えるイベント「全国写真洗浄フォーラム」が開催された。全国各地で写真洗浄活動をしている団体が集まり意見交換をしたり、講演、写真洗浄体験などが企画された。(主催/おたがいさまプロジェクト)
東日本大震災から広がりつつあるが、まだ十分認知されたとは言えない写真洗浄。主催の被災支援ボランティア団体「おたがいさまプロジェクト」の大竹修さんは、被災者に「洗浄ができると分かっていたら写真を捨てなかったのに」と泣かれた経験から、写真洗浄の認知度を上げるため2022年6月に第1回目のフォーラムを開催。さらに規模を拡大し、今回2回目の開催となった。活動を助成する(公財)キリン福祉財団の大島宏之さんは「どんなに小さな写真でも持ち主様には価値がある。全国の人が繋がれるこのような機会にはとても意味がある」と開催を喜んだ。
映画『浅田家!』のモデルにもなった写真家の浅田政志さんは「被災者の心に寄りそう写真洗浄」と題して講演を行なった。東日本大震災当時、浅田さんは東京でカメラマンの仕事をしていた。震災1カ月後、初めて岩手県野田村にボランティアとして訪れた。支援物資の仕分け作業をした帰り、避難所の一角で写真を乾かし洗浄する男性と出会ったことをきっかけに、活動を手伝うように。男性は震災後に村を歩いているとき、偶然知り合いの写真が流れついているのを見つけ、洗って持ち主に届けたところ大変感謝されたことから、ほかの写真も洗浄をして持ち主を探す活動を始めたという。どうしたら持ち主の元に写真が戻せるかを考え、写真を被写体から行事、お祭りなどに分類して壁に貼ったりした。当初8万枚あった写真は現在1万枚まで減ったが、今でも写真返却お茶会を開催し、持ち主への返却を目指している。
浅田さんは野田村を第2の故郷と言い、村の小中学生の写真を撮る活動を通して村民と交流を深めている。「今日伝えたいことは、お気に入りの写真は、データではなくプリントして保管してもらいたい。缶などに入れておけば長く保管できる。データは災害時、パソコンがダメになったらデータも飛んでしまう。写真なら、たとえ濡れても泥を被っても、修復することができます」と訴えた。
写真洗浄体験では、熊本県人吉市と石川県能登半島から集まった写真の洗浄を行った。作業に入る前には心の準備体操として、自分にとって大切な人やモノを思い浮かべる時間が設けられた。これから洗浄を担当する写真1枚1枚が持ち主にとって同じように大切なものであることを想像しながら作業に取り掛かった。水洗いした写真を乾かし、カビなど汚れがひどい箇所をアルコールのついたウエットティッシュでていねいに拭いていく。拭いた部分はインクが落ち白くなるが、それ以上腐食することはなくなる。
両親とともに初めて写真洗浄を体験した須磨区の片岡準太さん(小5)は「最初はちょっと怖かったけど、きれいになった写真が届いたらいいな」と真剣な表情で写真を洗浄していた。参加者は新たな被災地との関わり方を学び「被災地まで行けなくても、自分にできることがあることを知れてよかった」と話した。
写真洗浄の定期的な活動については下記インスタグラムにて。
@OTAGAISAMA_PROJECT
浅田政志さん