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西区

副市長出前トーク 森林資源の活かし方

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 2月14日(金)、西区役所(西区糀台)で神戸市の黒田慶子副市長による「神戸の里山の魅力と課題、森林資源の活かし方」を題材にした「出前トーク」が開催され、里山保全に関心がある農家や養蜂家、森林所有者など23人が参加した。
 出前トークは、参加人数を満たし会場を用意できたら、希望する内容に関して市職員が派遣され、施策や事業を説明してくれる制度。今回は西区押部谷で兼業農家をしながら里山の大切さに気づいた岡本幸恵さんが副市長への出前トークを依頼した。黒田副市長は森林病理学の専門家で森林保全などを40年にわたり研究し、神戸大学では教授として里山林の維持に取り組んできた。日本森林学会の会長も務め、それらの経験から昨年1月に副市長に就任した。
 神戸は市の4割が森林、その9割を里山林が占めているという。昔は里山の広葉樹を薪や炭といった燃料に加工し農家や集落の収入にする方法で山は管理され維持された。1950年代から、燃料が薪から灯油やガスへ、葉を堆肥にしていたものが化学肥料へと変わり、里山の資源が必要でなくなってきた。その結果放置された里山林が、現在荒廃へ向かっていると話す。神戸の森は緑豊かだが有史以来最も茂りすぎた状態で、専門家の目から見ると危うい状況とのこと。切らずに大木を保全すべきという見解もあるが、茂り過ぎて暗くなった里山林は周辺の田畑に影を落とし、若木も育たず、倒木やナラ枯れの原因にもなる。竹林の拡大で広葉樹林も消失しているという。元気な森にするためには、里山林をもう一度管理し、多種多様な樹種が生育する六甲山の資源や、都市部と山とが隣接する神戸の立地を活かし、収入にしていく事が不可欠と話した。
 副市長は就任前から、神戸市と連携し、里山林を適切に維持管理するため、里山の資源を収入にする活動に取り組んできた。そして「次世代に森を渡す道筋」が少し見えてきたと語る。北区の広葉樹は、カリモク家具株式会社などが購入し良質の家具に。市内の施設でも神戸市産木材の家具が使われ、カシは高級備長炭になり市内のレストランで使用できないか検討している。都市部と農村部で構成される神戸ならではの成功例は、都市部の下水汚泥から回収したリンを農家が肥料として使用し、肥料で育った作物を再び都市部へと供給するという資源循環型経済の取り組み。10年越しで成功した。
 また参加者の質問の多くは、巨木や葛などがいつの間にか繁茂してしまい手こずっているが共存の道はあるかというものだった。「農地の木は気づいたらすぐ引き抜くのが原則。日本の植物との相対し方は、一気でなく人がマメにやるしかない。昔の人がやらなかった対処法は、やらない方が良い理由があるからです」と答えた。
 森にいる猪や鹿など野生獣も資源としてジビエに、里山への移住者招致や有馬の温泉客を農村体験へ繋げる取り組みもある。昔の里山利用に戻すのでなく、さまざまなジャンルと共存し持続可能な社会を目指すと熱く語った。
 自然農を学ぶ参加者の豊田正恵さん(西区樫野台)は、「副市長の里山のお話は自然農の先生がいつも仰る『守るだけでない共存共栄』と似ていると思いました」と話した。出前トークを依頼した岡本さんは「里山は人が手を加えてこそ美しく、豊かに実ります。森林や里山がなくなれば、大気や水質汚染にも影響が出るはずです。今日は里山の重要性と存続を更に強く実感しました。自分にできる事をもっと考えていきたい」と想いを語った。
 神戸市は「こうべ森と木のプラットフォーム」のサイトで、多様な人たちが知恵を出しあい、森林を育み活かす取り組みを始めている。森林活動など、森林循環に関わりたい人は誰でも会員になれる。

こうべ森と木のプラットフォーム

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