私らしさプロジェクト オープンミーティング(座談会)
神戸市は、女性の多様な生き方を応援するために「私らしさプロジェクト」を立ち上げ、すべての女性が「私らしく」生きられるまちを目指している。市内の女性が活躍する姿を発信するとともに、女性の生の声を聴くイベントを開催しており、12月4日(水)には、学園都市ユニバープラザ(西区学園西町)で第3回目となるオープンミーティング(座談会)が開かれた。
この日のテーマは、「あなたらしい生き方・働き方」。女性にとっての理想の生き方や生きやすさ、働きやすさなど、日頃感じていることを一緒に話し、考える目的で実施された。(主催/神戸市 委託/神戸新聞社)
当日は事前申込をした市内在住の20~50代の女性6人がスピーカーとして参加。リスナーは事前申込は不要で、自由に見学できた。司会進行は神戸新聞社(編集局社会政経センター報道部)の記者、名倉あかりさんが務めた。
会が始まる前に、名倉さんがモニターを使い、座談会の趣旨を説明。神戸市はほかの政令指定都市に比べると女性の労働率が低い傾向が続いている。そこで女性の活躍を後押しする市の取り組みについて触れた。「本日の目的は結論を出す会ではなく、皆さんの今に至る背景やこれまでのリアルなご経験を話していただき、一人ひとりの価値観を知って糧になればと。また自分と違った意見をも受け入れる姿勢を大事にしていただきたい」と参加者に伝えた。
今回のスピーカーは「母親」という共通点はあるが、境遇や事情はさまざま。自己紹介のあと、いくつかのテーマについて話し合い、途中、名倉さんが知りたいことや気になったことを掘り下げて参加者に質問する形式で進められた。
最初のテーマ、「専業主婦へのあこがれは?イメージは?」について参加者からは「ハイソサエティ(上流階級)なイメージ」や「自分の母親が専業主婦で憧れているが、将来のために働かないとと思い今の自分にはできない」などの回答があった。「現状の生活の満足度は?」のテーマでは、9割以上の満足度を感じている女性が多かったが、「育児休暇中で心細く感じることもあり、社会との繋がりを持ちたい」「働いているので子どもと過ごす時間が少ないと感じる」といった悩みもあり、各々を取巻く環境を話した。
「就労の壁」については「子どもの発熱時に急に仕事を休めない環境」「子育てが落ち着き、自分のためにもっと正社員として働きたいけど悩み中」や「働きたくても子どもや介護などの事情で外に働きに行けない人のために『在宅ワーク』を増やしてほしい」などの意見が挙がった。さまざまな意見の根底には、家族と向き合う時間を大切にしたいという思いがある。しかし、子育て・介護と仕事(フルタイム)の両立に難しさやジレンマを感じ、葛藤しながらも、どちらか答えを選択せざるを得ない社会環境が現状との声が多かった。
生後3カ月の子どもを育児中の女性が「時折孤独を感じる」という悩みに対して、名倉さんがほかの参加者たちにアドバイスを求める場面もあった。自分の子育ての体験を振り返りながら、市のすくすくセミナーやベビーサイン教室などに参加して同世代の人とコミュニティを広げたり、育児を楽しんでもらいたいと伝えた。
これから期待する就労支援や、制度など未来に繋がる提案として「市が率先して女性が家庭を大事にしながら働くことができる新しい制度や環境づくりに取り組めば(例えば、急な欠勤に対応できる十分な人員確保、単発バイトなどで人を迅速に補充できるシステム、時短勤務を気軽に誰もが当たり前に取得する環境など)、ほかの民間企業も続いて、環境が変わるのでは」という意見があった。
この会に参加した感想として「会に参加するまでは、『専業主婦』は良いなというイメージだったが、自分の時間をファミリーサポートや子ども食堂などのボランティア活動で使っている人たちがいると知って驚きました。子育て世代が働きやすい環境を陰で支えてくれている」と気づきをあげる参加者もいた。「皆それぞれの立場があり、何を幸せとして重きを置くかは個人によって違うが、役割を補いあっている」と、さまざまな価値観を知れてよかったとの声もあがった。
主催の神戸市企画調整局SDGs推進課の杉山あゆみさんは「もし働くとしたら、どういう環境、支援があるといいかなど、女性の暮らしやすいまちの実現に向けたヒントが得られました。幸せは人によってさまざま、といったお話もあり、みなさんの幸せが実現できるように取り組みたい」と話した。
スピーカー6人と名倉あかりさん(前中央)