神戸市こころのサポーター養成研修
11月18日、須磨区役所内健康教育室1、2(須磨区大黒町)で「神戸市こころのサポーター養成研修」が行われ、約40人が参加した。(主催/神戸市)
こころのサポーター(以下略してここサポ)とは、メンタルヘルスや精神疾患への正しい知識と理解を持ち、身近にいる「こころの不調で悩む人」に対して、できる範囲で手助けをする人のこと。同研修ではここサポになるためのメンタルヘルスや精神疾患の基礎知識と、悩みに耳を傾けるスキルなどを学ぶ。厚生労働省は令和6年度から10年間で100万人のここサポ養成を目指しており、神戸市でも10月から各区で研修が行われてきた。
講師を務めたのは、メンタルヘルス専門の訪問看護ステーションtoctocの管理者であり、保健師・看護師の大谷利恵さん。第一に、こころの病気の有無にかかわらず、みんなで助け合い誰もが安心して自分らしく暮らしていける社会が目標にあげられた。世界精神保健調査によると、日本で精神障害に罹患する生涯有病率は22・9%。成人の5人に1人以上が生涯に1度はこころの病気を経験しており、いつ誰がかかってもめずらしくはない。
身近な人のこころの不調に気づくには、「いつもと様子が違うこと」に気づけるかが重要となる。例えば、遅刻や休みが増えた、ミスや物忘れが多い、急に痩せた、太った、怒りっぽくなった、顔色が悪い、お酒の量が増えた、SNSの投稿が減ったなどが挙げられる。変化に気づいた場合、まずは「おはよう」「最近どう?」など、自分が気にかけていると伝えてみることから始め、相手が答えやすい質問をし、さりげなく会話を続けていくとよい。相手が話し始めたら手を止め、身体を相手の方へ向ける。話を聞くときは穏やかな表情でうなずく、沈黙に寄り添う、相手の言ったことを繰り返したりするのがポイントになる。また、サポートの手段を伝えても、あくまで本人の意見を尊重し、押し付けないことも大切であると説明。
こころの病気からの回復=リカバリーとは、症状の減少や緩和を目指すだけではなく、個人が希望や夢を持ち、達成していくプロセスであるため、人それぞれ異なるという。休養、環境調整(生活・仕事の調整など)、カウンセリング、ピアサポート(当事者会・家族会など)など、回復の道が紹介された。
講座の後、参加者はグループに分かれて「聴く」ワークを行った。テーマについて聴く役、話す役を交代で行い、お互いの感想を伝えあった。話を聴くときの表情や相槌の打ち方、質問の仕方などで、話しやすさが大きく変わることを実際に体感した。 長年、仕事で精神疾患を抱える人と接してきたという山形久美子さん(須磨区)は、「研修に参加したことで、改めて原点に帰れた。『聴く』ワークをできてよかった」と満足げに話した。職場の掲示板の募集を見て参加したという消防士の男性は「話を聴く姿勢や強弱をつけた相槌の打ち方など、参考になりそうです。今後、役立てていきたい」と話した。
講師の大谷さんは「こころの病気は誰もがかかりうる病気なのに、見た目に分かりづらく、誤解を受けたり孤立することも多い。周りの人が正しい知識を持つことが大切です」と訴えた。神戸市健康局保健所保健課の藤原美幸係長は「多くの方に興味、関心を寄せていただき、どの回も皆様が積極的に研修に参加してくださり活気があふれた研修となりました。多様な世代にこころの病気への理解や支え合いの輪が広がっていくよう、今後とも取り組みを進めてまいりたいと思います」と意欲的に語った。
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大谷利恵さん
参加者に授与されたリストバント