えほん寺ピー いのちのまつり4
10月12日(土)、須磨寺(真言宗須磨寺派上野山福祥寺・須磨区須磨寺町)で、「えほん寺ピー いのちのまつり4」が開催された。(主催/えほん寺ピーいのちのまつり神戸実行委員会)
えほん寺ピーとは、絵本セラピー®を全国のお寺で開催する試み。住職の法話と絵本をリンクさせ、お寺を身近な存在にすることで、地域コミュニティの再生を目指している。須磨寺では2021年から年に1度開催されており、4回目の今年は会場、オンライン合計で約150人が参加した。
講師の絵本セラピスト協会・代表の岡田達信さんは、子どものために買い集めた絵本からさまざまな気づきを得て、大人のための「絵本セラピー®」を考案したという。絵本セラピー®では、大人が絵本を読んでもらって感じたことや考えたことをその場にいる人たちと共有するなどし、絵本の力を借りて人と人をつなぐ。
第1部は「おせっかい」をテーマに5冊の絵本の読み聞かせが行われた。会場では岡田さんの手元でめくられる絵本のページがスクリーンに大きく映し出され、絵本の世界に没頭できるよう最後列までしっかり絵本が見られる工夫がされていた。3冊目の『ええことするのは、ええもんや!』(くすのきしげのり/作、福田岩緒/絵、えほんの杜/出版社)は、特に参加者の反響が大きかった。夏の暑い時期、小学生の主人公が学校の帰り道に電動車いすに乗って動けなくなっているおじさんと出会い、助けるというストーリー。最初は目の前で困っている人を助けたいという純粋な気持ちから始まるのだが、物語が進むにつれ少しずつ少年の気持ちに変化が芽生える。話を聞き終えた参加者は4人一組で順に自分の感想を述べ、残り3人の感想を聞く。同じ本でも、聞き手の感じ方は人それぞれで、そこに正解不正解はない。
福岡県在住の田中もとこさんは、大阪市在住のいとこの泉浩実さんと二人で参加。「初めて参加したが、あっという間に時間が過ぎてしまった。他の方の感想の共有で新たな気付きもあり、とても楽しい時間が過ごせてうれしかった」と話した。
休憩時間には笑喜転一頁さんによる落語が披露された。普段は板宿で本屋を営んでいることから「一頁」と名付けたという。お寺での日常を切り取った落語に会場は笑いに包まれた。
第2部は須磨寺・小池陽人副住職の法話が繰り広げられた。紹介された絵本の感想や仏教的視点からみた解説が行われた。「誰かのためにと意識しているうちは、本当の利他ではないのかもしれない。自分が無意識に、自然にとった行動を自分の知らぬうちに誰かが受け取り誰かのためになっていることがある。人は誠実に生きているとき、意識せずとも誰しもが利他的な存在で、皆が観音様なのです」と説いた。
最後に岡田さんと小池副住職の対談が行われた。小池副住職は「絵本セラピーの醍醐味は人と話すことにあると思いました。ただ、会話や対話をするだけで癒やされるんだと思います。私はお寺をよくサードプレイスにしてほしいと言っています。第1が自宅。第2が職場や学校。忙しい現代人はその往復になってしまうことも多い。これらは役割を生きる場。心安らかになれる第3の居場所がお寺の担う役割だと感じています。お寺での絵本セラピーは「場」としても「空間」としてもサードプレイスになるのではないかと思います」と語った。岡田さんは「絵本セラピーでさまざまな価値観を持つ人たちをつなぐことができれば、うっかり世界を平和にしてしまうパワーになると信じています」とほほ笑んだ。
笑喜転一頁さん