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お月見ナイトミュージアム

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9月14日(土)、明石市立天文科学館(明石市人丸町)で「お月見ナイトミュージアム」が開催された。事前申込をしたおよそ250人が、宇宙開発の専門家による講演会や、天体望遠鏡での観月を満喫した。
同イベントは身近な天体である月に親しみ、月を愛でる文化を広めようと行われた。同館では、七夕、お月見、ハロウィン、クリスマスの時期にイベントを開催し、毎度トークショーや演奏会など趣向を凝らした内容で、即日満席になるほどの人気ぶり。

今回の「お月見ナイトミュージアム」では、2つの講演会と観月会が行われた。日本として初めて月面着陸に成功した無人探査機SLIMのプロジェクトマネージャ坂井真一郎さんと、JAXA宇宙教育センター設立に尽力した初代センター長の的川泰宣さん(リモート出演)が講師を務めた。

「JAXAの方から話を聞くのは2度目。わくわくしています」と話す亀山龍さん(神戸大学付属小4)は、幼稚園の頃から各地の天文台に通う大の天文ファン。当日は小学生の親子参加も目立っていた。西宮から参加の松山弦之介さん(西宮市立安井小2)は、2歳9カ月から星の友の会メンバーで望遠鏡を2台所有しているという。

SLIMプロジェクトマネージャの坂井さんは「月に降りた小型月着陸実証機SLIMと、開かれた新しい扉」と題し講演。坂井さんは2016年から同プロジェクトマネージャを務める。日本初の月面着陸に加え誤差100m以内という高い着陸技術の実証を目指し、発足から8年後の今年1月、世界で初めて目標地点から誤差10m以下のスポット着陸に成功した。「今もなお、月面着陸は難しい技術で成功率は2分の1程度」と坂井さん。SLIMが誇る位置補正システムや、着陸成功時のJAXA研究所のリアルな様子がスライドで紹介され、参加者は聞き入っていた。

JAXA名誉教授の的川さんは「お月さまと私たち」と題し、豊富な経験から知り得たさまざまなエピソードを披露。ロケットの起源は竹筒に火薬を詰めた戦争の武器であったことや、「アポロ11号月面着陸時の写真は、船長のニール・アームストロングではなく2番目に降りた操縦士のバズ・オルドリン。初の月面着陸時には、自分以外の人間がいないのだから写す人がいなかった」などのエピソードに参加者は興味深げに耳を傾けた。講演は2008年、衛星「かぐや」が収めた月面から昇る地球の映像で終了。この映像を収めたハイビジョンカメラの搭載は、的川さんが〝天体ファンに喜んでもらいたい〟との思いから、ほかの研究資材を降ろしてまで積み込むことを推薦し実現したという。「高温になる宇宙空間では機材トラブルも多く、映像が届くまでハラハラしていた」とのこと。

講演会の後は、午後9時半まで4階の日時計広場で観月会と夜の館内見学。あいにくの雲がかかる一夜だったが、参加者はスタッフやボランティアのサポートにより望遠鏡や肉眼で見える秋の星空を楽しんだ。


坂井真一郎さん

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