垂水のいいね!スポット編 旧武藤山治邸(きゅうむとうさんじてい)
2019年1月23日号掲載
旧武藤山治邸(きゅうむとうさんじてい)
明治期における西洋式別荘の文化と、そこで暮らす人々の生活様式を当時のまま残した西洋館
JRの線路を挟んで南北に広がる「舞子公園」。当コーナーでは、その園内にある「孫文記念館(移情閣)」や「舞子海上プロムナード」、「旧木下家住宅」などの施設をこれまで紹介してきた。今回、訪ねた「旧武藤山治邸」も、その中の1つで、舞子公園南地区の東側、海に面して建つ。
同館は、明治40年に鐘紡の中興の祖と言われ、衆議院議員として活躍した武藤山治が舞子海岸に建てた住宅を再現した西洋館だ。オリジナルの建物は洋館に和館がくっついた和洋折衷の建物だったが、今の場所には洋館のみ移築されている。ちなみに、当時、住人は普段は和館に住んでいて、来客時に洋館を使用していたという。
資料によると、同館は別名「旧鐘紡舞子倶楽部(きゅうかねぼうまいこくらぶ)」ともいい、1907年に建てられた木造2階建ての建物で、植民地時代の建築スタイルであるコロニアル様式の西洋館。設計したのも日本人で、当時は西洋館に日本人が住むこと自体珍しかった。
外観の特徴としては、元の場所は、目の前が海だったそうで、その風景を楽しむため2階には、瀟洒(しょうしゃ)なベランダが設けられている点が挙げられる。一方、建物内部は、建設当時のものが保存されており、それに合わせてテーブルコーディネイトなど明治時代の生活様式が再現されている。このように明治期の西洋館の住宅形式や当時の実業家の生活を可能な限りオリジナルのスタイルで残していることから、平成23年7月には登録有形文化財に登録されている。
また同館は、内部を全て公開していることに加え、ジャズなどの演奏会が定期的に行なわれている点が特徴となっている。演奏会には、一流のミュージシャンも招かれるが、いずれも低料金で演奏が聞けるそうで、こうしたことから、ジャズファンからは、『隠れジャズの本場』と呼ばれているとか。
また同館は内部を全て公開していることに加え、ジャズなどの演奏会が定期的に行われている点が特領となっている。演奏会には一流のミュージシャンも招かれるが、いずれも低料金で、ジャズファンからは『隠れジャズの穴場』呼ばれているとか。
これに関して米津寛司館長は、「神戸は日本のジャズの発祥の地です。また神戸には西洋館もたくさんあります。この2つをコラボすることで、お互いの魅力がよりアップすると考え、ジャズの演奏会を開くことにしました」という。神戸ジャズは同館と同い年だと言われているそうで、もし興味があるならば、演奏者や日時はホームページなどで公開しているので足を運んでみてはどうだろうか。
さらに日・祭日は、特設のカフェもオープンするので、明治の雰囲気を楽しみながらお茶を楽しむのもいいかもしれない。
なお、もちろん同館だけ見学するのも良いが徒歩圏内にある「孫文記念館(移情閣)」と「旧木下家住宅」の3館を巡ることができて割安な3館チケットも販売しているので、それを利用して、3館とも訪ねてみるのもお勧めだ。JRあるいは山陽電鉄の駅から南に向かい、壮大な明石海峡を眺めながら「橋の科学館」「舞子海上プロムナード」を見学し、そのまま海沿いを歩いて「孫文記念館(移情閣)」「旧武藤山治邸」を見てから国道2号線を渡り、「旧木下邸」を見学するコースで、休日の天気の良い日に一度ウォーキングを兼ねて散策してみてはいかがだろうか。歴史的建築物の数々を見るだけでも歩く価値があるだろう。