編集記事

垂水区

愛徳学園中学校「ビブリオバトル」からはじまる本との出会い

記事 愛徳学園中学校「ビブリオバトル」からはじまる本との出会いのアイキャッチ画像

愛徳学園中学校・高等学校(垂水区歌敷山)の生徒全員が授業の一環としてビブリオバトルに取り組んでいる。
同高校では約10年前から「国語表現」の授業の一環としてビブリオバトルを実施。「ビブリオバトル」とは本を紹介するコミュニケーションゲームで、参加者は自分が推薦する本を1人5分の持ち時間で紹介。発表後に参加者全員で質問や感想をやり取りし、最も読みたいと思った本(チャンプ本)を投票で決めるというもの。生徒たちは本に触れる機会が増え、プレゼンテーション能力の向上や生徒同士のコミュニケーションアップにも繋がっており、数年前から同校学園祭での発表プログラムの一つになっている。
高校生の取り組みを受け、中学生もやってみたいと多くの声が上がり今年度から実施を始めた。1月に校内で「中学部ビブリオバトル大会」が初開催され各学年代表2人ずつ計6人が出場。投票の結果、2年(大会当時)武藏杏菜さんが紹介した「なれのはて」(加藤シゲアキ/著)がチャンプ本に選ばれた。武藏さんは2月に開催された京都・兵庫・奈良・滋賀の4府県対象となる「中学ビブリオバトル京都大会」に続き、3月24日(日)に龍谷大学瀬田キャンパス(滋賀県)で開催された「全国中学ビブリオバトル大会」に学校代表で出場した。
発表では、大まかなあらすじを1分で説明した後「もっと読みたくなる沼にハマっていただきます」と若者らしい言い回しも。主人公が一枚の不思議な絵の真相を追い求める中で登場人物も多く、時代が令和から昭和、大正へと移るなど多岐にわたる情報量に頭の中がいっぱいになりモヤモヤを感じたと話す武藏さん。「蟻(アリ)になった自分が探し物を求めて別の蟻の巣を冒険しているよう。突然暗闇に放り出された気分と同じ」と比喩を用いて表現。緊迫感からストーリーの中にズルズルと引き込まれ、リアルに謎が深まっていくミステリーだと紹介した。「人は生きていると何らかの欲望に目覚め変わっていく。この本から皆さんの欲望を見つけてください。そしていつかその欲望について熱く語り合いたい」と締めくくった。
全国大会当日は「直前まで頭が真っ白になる感覚だったが本番は吹っ切れて緊張しなかった。今までで1番の出来!」と達成感をにじませた。同書は長編小説でしかも難しい言葉が多く辞書とスマホで調べながら読み、さらに深掘りする作業が大変だったと振り返る。武藏さんは「ビブリオバトルをしてから読書好きになった」と笑顔で話した。 同校国語担当の米田俊彦教諭は「本を人に勧めるにはまず自分が面白いと思うこと、そして本を読み込んで理解を深め、知識や視点を広げていく過程が必要。自己成長にも繋がる」と話す。また、紹介された本を読んでみたいと生徒の読書の幅が広がっているそうで、人を通して本を知り、本を通して人を知ることができるという。「生徒たちには思いがけない新たな本に出会ってほしい」と話した。


全国大会の様子

カテゴリー