西区在住の洋画家 烏頭尾 寧朗(うとおやすお)さん(西区 狩場台)
烏頭尾寧朗(うとおやすお)さん(70)(三木市美術協会所属)の個展「時の忘れもの」が1月に三木市立堀光美術館(三木市上の丸町)で開催された。海と山の自然に囲まれた神戸で育った烏頭尾さんは、小学校の絵画クラブで恩師と行った異人館や動物園での多くのスケッチの経験が、今の絵の原点になっていると話す。
烏頭尾さんは多くの受賞歴を持つ洋画家だが、大学では経済を学び北アルプスなどへの登山を趣味とした。卒業後は銀行に就職し63歳まで勤めたという経歴の持ち主。長男として生まれた責任感と絵だけでは食べていけないだろうという現実的な考えがあった。
学生時代、そして就職後も描くより美術品を多く観ることで審美眼を養っていたが、絵に対しての探求心は消えることなく、阪神大震災の翌年、40代半ばにして、当時の作家の登竜門であった兵庫県展に初出品し受賞。その翌年にこうべ市民美術展で市長賞を受賞したことが自信となり、銀行員をやりながら本格的に創作活動を始める。
現在の作品は抽象画。少年時代に好きだった神戸の季節の変わり目や自然の匂い、素足で歩いた土の感触、また作品に影響を与えている北アルプスの大自然など、それに対する人間の存在を表現するには、抽象画が合っていると語る。創作活動は三木市緑が丘に構えるアトリエで。「作品とのキャッチボールですね、返球が無い時はキャンバスを裏返して時間を置いたり、言わば自己との対話。だから7割ぐらいまで描くと、後の3割はじっくり見ている時間の方が多くなる」と烏頭尾さん。
個展のテーマ「時の忘れもの」は、自然への畏敬の念と人間のかかわりを描いているので震災などがあると作風は大きく影響を受け、東日本大震災直後に描いた作品からは強いメッセージ性を感じる。一昨年には長年の活動が認められ神戸市文化活動功労賞を受賞。それを記念して初の画集を発行した。
〈東日本大震災直後に描いた作品〉
〈アトリエの様子〉
今後の創作活動として「75歳までの5年間で、春夏秋冬を題とした4枚の絵を200号のキャンバスで描きたい」と意欲を見せる。「記事に出たらプレッシャーになるけど」と笑った。
3月16日から27日まで、神戸北野のギャラリー島田(神戸市中央区山本通2・4・24)で画集出版記念の個展を開催。16日はBBプラザ美術館顧問との対談もある。(無料・予約不要)