コミスタこうべ「市政リレー講座」
4月19日(水)に、コミスタこうべ〈神戸市生涯学習支援センター〉(中央区吾妻通)で「市政リレー講座」が開かれ、75人が参加した。
コミスタこうべでは、さまざまな現代的課題の中からテーマを取り上げ、市政をわかりやすく伝えるために市政リレー講座(出前トーク)を実施。4月からのテーマは「みどり・公園」。全3回シリーズの第1回目では、灘区の市立王子動物園副園長の竹原孝弘さんを講師に迎え「いま動物園がおもしろい」と題した講座が開催された。
「ビーナスブリッジで有名な諏訪山公園内に動物園があったことを皆さんご存じですか」と問いかける竹原さん。昭和3年に現在の王子動物園の前身となる諏訪山動物園が開園。その後、昭和26年に王子動物園が開園するにあたり動物たちはトラックで運ばれたが運搬が困難だった2頭の象は市内を3時間ほど歩いて移動。途中で路面電車の音に驚いた象が興奮し見物客が逃げ惑い、当時の園長が転倒する様子が写真に収められていた。
六甲山脈に広がる自然豊かな王子動物園はジャイアントパンダとコアラを同時に見ることができる国内唯一の動物園でフラミンゴの繁殖数は日本一だと話す。昨年誕生したアシカ2頭の授乳の様子やコアラの木登り、キリンの赤ちゃんの動画などを紹介。また心臓疾患が判明したジャイアントパンダ「タンタン」の近況について、各種検査を実施して健康状態の打ち合わせを毎週中国側と行い、中国の専門家を招くなどして全力で治療に取り組んでいると説明した。「タンタンはほかのパンダと比べて魅了される行動が多いので可愛い!」と近くで見守る竹原さんならではの感想も。
同園では131種776点の野生動物を飼育展示。そのうち113種がレッドリスト(絶滅の恐れがある野生動物)で、その中でも44種が絶滅危惧種だという。絶滅を防ぐために全国の動物園が協力して繁殖に取り組み、アムールトラは同園が主体となって進められている。「動物のことを深く知ってもらうため絶滅危険度や特徴などを記した看板を檻の前に設置しています。動物の姿は日々違うので毎日来ていただきたい」と呼び掛けた。
竹原さんは動物園の役割として①種保存(希少動物の保護・繁殖)②教育活動(野生動物の魅力や環境保護を伝える)③調査・研究(種保存や動物福祉の向上に活かす)④レクリエーション(憩い、動物の魅力を体感できる場の提供)の4つを挙げる。また王子動物園が直面する課題として獣舎の老朽化や多様化に対応した施設更新に加え、環境整備などを解決するためのリニューアルを昨年からすすめている。「六甲の豊かな自然に囲まれ生き生きと過ごす動物たちの姿を来園者がゆっくりと観察できる憩いの場となり、魅力あふれる動物園を目指します」と締めくくった。
毎週同園に訪れるという灘区の小林謙治さんは「トラが好きで見ていて飽きない」と毎回写真を撮っているそう。北区の片平亮一さんは「先日花見の後、久しぶりに王子動物園に行った時に絶滅リストの看板を見ました。今日は理解が深まり、勉強になりました」と話した。
竹原孝弘さん