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西区

なでしこ芸術文化センター オープン

記事 なでしこ芸術文化センター オープンのアイキャッチ画像

10月1日(土)市営地下鉄西神中央駅前に、文化・芸術ホールの「西神中央ホール」と、移転した「神戸市立西図書館」の複合施設「なでしこ芸術文化センター」(西区美賀多台)がオープンした。

オープン当日に行われた開館記念式典では久元喜造市長が、市の西部に本格的な芸術文化拠点が完成したことを喜び、ホール稼働への抱負を述べて祝辞とした。
同ホールには、つながりや親しみが生まれる地域交流の拠点を目指す「おかえりサロン」というコンセプトがある。その一環でボランティアの「市民サポーター」が、ホールのレセプション・広報企画・舞台技術の面から劇場を支える。約2年前からワークショップを通じて地元住民と交流を図っており、開館翌日のこけら落とし公演では、第1期の公募で選ばれた市民サポーターが、接客研修を受けて来場者を迎えた。

西神中央ホール館長の金森俊樹さんは「こけら落としで接客をしているサポーターの皆さんの表情からも『ようこそ!』という歓迎の気持ちが見て取れました。私たち運営側だけでは醸し出せない、おもてなしの心を担ってくれていると感じ、2年前からの活動が形になったことをともに喜びました」と語った。

劇場は舞台背後の壁が可動式で、壁が開くと外からも舞台を見ることが出来る斬新な造り。間にあるアートスペースの壁も全開にすれば舞台から屋外の交流広場までが一体化した空間になり、多様な催しが可能になる。またドラムやアンプ、ピアノなどが常設された防音機能のある貸しスタジオがあり、人気とのこと。

劇場と図書館の共有部には〝知と芸術をつなぐ〟がコンセプトの展示棚「アートウォール」を設置。オープニング企画として、神戸芸術工科大学出身の若手アーティストの作品や、埋蔵文化財センターとのコラボ作品が展示された。作品を鑑賞していた中出さん夫妻(学園東町)は「アートが好きで娘と美術館巡りもします。綺麗な施設になりましたね」と話した。芸工大エリアのディレクター、小國陽佑さんは「この地で表現力を培った卒業生が、作品を通じて癒しや活力を地域の方にお届けできることがうれしく、それがまた次なる学生や若手アーティストが育つ源泉になることを願っています」とコメントした。

1階の頭上には、神戸在住の書家である和田彩さんの作品「金龍」が、高い吹き抜け空間を活かして展示された。和田さんは「オープンにちなみ『祝祭』をコンセプトに、日本人が持つおめでたいイメージである金地に龍を描きました。そして、この場の文化芸術の発展を見守る『守護神』として、龍を飛ばす展示にもこだわりました」と作品への想いを語った。後日、展示中の作品の余白に龍を描くライブパフォーマンスも行われ「言語を超えたところで伝わる芸術の良さを『書の線』で表現したい」と和田さんは話した。(10月末で展示終了済み)

西神中央ホール開館翌日の10月2日(日)には「スーパーストリングスコーベ」による、こけら落とし公演が行われた。HKMエンタープライズ(株)がプロデュースするスーパーストリングスコーベは世界的指揮者の佐渡裕さんが芸術監督を務める「スーパーキッズ・オーケストラ」を卒業後、一線で活躍中の若手演奏家で構成された弦楽集団。指揮者を置かず、ジャンルにとらわれない自由な演奏スタイルが注目を集めている。
1曲目「絃楽のための三楽章〜トリプティーク」では、コンサートマスターのヴァイオリン奏者、立上舞さんがスッと息を吸うと、それに合わせた力強い絃が一斉に響き、躍動感あるリズムで一瞬にして観客を引き込んだ。舞台と客席が近く、メンバーがアイコンタクトと呼吸に集中し、まとめあげていく臨場感を目と耳で味わえる。西区竹の台在住の永田譲蔵さんは「中規模ながら音響も素晴らしいホールで『You RaiseMe up』では思わず涙ぐみました」と感激していた。
チャイコフスキーの「弦楽セレナード」などを含む7曲を演奏後、アンコールは〝おかえりサロン〟にちなんだ「遠き山に日は落ちて」の原曲として知られるドヴォルザークの「家路」。低音が響き、夕暮れを思わせる郷愁のある音色に観客は聴き入っていた。アンコール2曲目はスーパーストリングスコーベの定番曲「リバーダンス・メドレー」。客席も手拍子で参加する一体感の中で演奏を締めくくると、満席の会場からは拍手が鳴り響いた。
スーパーストリングスコーベ音楽プロデューサーの池田明子さんは「低音が豊かに響くホールの特徴に合わせ、ヴィオラとチェロの配置をいつもと逆にするなど工夫しました。舞台上どこで弾いても柔らかく、それでいて粒がきちんと聴こえる音は、お客様が入るとさらに増し、温かみのある響きになりました。演奏していて幸せな気持ちになる、また帰ってきたいホールです」と話した。

市立西図書館は「新しい出会い・発見がある本の広場」をコンセプトに、3階層で多世代が快適に過ごせるよう生まれ変わった。移転前より収蔵数が30万冊と3倍、座席も約300席に増えた。本は館内なら持ち出し可能で、カフェ利用しながら読むことが出来る。また各階に「グループ学習室」や「ボランティア控室」を作りにぎわいと滞在型の図書館を目指す。来年1月末からはネットでの座席予約も可能になり、ますます利便性が高まるという。館長の石川絵理さんは「コロナ禍で親子での来館が減った中、初日に紙芝居をされている親子の姿を拝見した時には『戻ってきてもらえた』と込み上げるものがありました。本を借りて返すだけでなく、のんびり楽しく過ごしてもらえたら」と開館の喜びを語った。西区竹の台から訪れた内山さん母娘は「広く、近くなって通いやすくなりました。ホールの子ども向け公演にも興味があります」と話した。

図書館とホールの両館長は「せっかくの複合施設。コラボ企画の構想もあります」と口を揃える。そして館内で思い思いに過ごす来館者を見て「用事がなくてもふらっと寄ってもらえる、そんな拠点を目指します」と笑顔を見せた。

西神中央ホールホームページ→コチラ


金龍


図書館館長の石川絵理さんと西神中央ホール館長の金森俊樹さん

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