心かよわす市民のつどい
8月25日(木)神戸文化ホール(中央区楠町)で「心かよわす市民のつどい」が開かれ、約80人が参加した。【主催/神戸人権啓発活動地域ネットワーク協議会(神戸市、神戸地方法務局、神戸人権擁護委員協議会、社会福祉法人」神戸市社会福祉協議会)】
神戸市では家庭や学校、地域、職場など身近なところで人権の大切さについて考えてもらおうと、毎年8月を「心かよわす市民運動」月間と定め、啓発事業を実施。この日は元タカラジェンヌでLGBTアクティビストの東小雪さんを講師に迎え「LGBTを理解する~日本社会の中でマイノリティーであること~」と題した人権講演が催された。
東さんは宝塚歌劇団を退団後、レズビアンであることをカミングアウト。2013年に東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ、2015年に東京都渋谷区の同性パートナーシップ制度による証明書交付第1号となった(後にパートナーシップ解消)。同性パートナーシップ証明制度とは同性カップルの関係性を「婚姻相当に認める」制度で、各自治体独自の証明書が発行される。法的拘束力はないが病院で家族として扱われるなど一定の権利が認められている。現在223自治体が導入、証明書の交付件数は3100件を超え全国に広がりをみせている。しかし地域での偏りが見られるため「日本全国どこに住んでいても同じ制度が使える同性婚の法制化も重要な課題」だと提言する。
東さんが活動を始めた10年前はLGBTを知らない人がほとんどだったと振り返り「知らない人権は守れないので言葉が浸透していくのはうれしく思う」と話す。LGBTとは性的マイノリティ(性的少数者)の総称でL(レズビアン=女性同性愛者)、G(ゲイ=男性同性愛者)、B(バイセクシュアル=両性愛者)、T(トランスジェンダー=出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる人)の頭文字を取った呼称。ほかにもQ(クエスチョニング=性的指向や性自認が定まっていない)、アセクシュアル=他者に対して恋愛感情を抱かない、などLGBTの分類に収まらない類型もあり、性的指向や性自認など性の在り方は誰もが持つもので多様である。最近の調査ではLGBTは人口の8・9%を占め、11人に1人の割合。「周りにいないのではなく言えない人が多いだけで、当事者の方と既に出会っているはず。実は身近な存在なのです」と説明した。
東さんは22歳の時に決死の覚悟で両親にカミングアウトしたが残念そうにしていた光景を今でもよく思い出すという。「今思えば両親はLGBTについて知識と理解がなかったため、ショックだったと思う。もし可能ならば『話してくれてありがとう。愛する子どもであることは変わらないよ』という言葉があればどんなに救われただろう」と自身の経験も交えて話した。東さんは「みなさんは今後、当事者の人と出会ったりカミングアウトを受ける機会が増えるかもしれない」と話し、子どもから打ち明けられた時は一人で抱えこまずにアウティング(LGBTに対して本人の了解を得ずに第三者に暴露すること)にならないように気をつけて専門員に相談を。また公認心理師の資格を持つ東さんは「福祉を担うものとして、どこにアクセスしても適切な支援が受けられる社会を作っていかなければ」と力強く話した。
最後に「『見えない』から『いない』は間違いです。見えなくてもみなさんの身近に必ず存在している当たり前のことなのです。そしてLGBTが分からなくても大丈夫。今日から『LGBTアライ(理解者、支援者)』になってください。当事者ではないが差別はしない、応援するよ、という気持ちを持ってほしい」と締めくくった。
東小雪さん