書と地蔵画・川柳のコラボ書柳集「きこきここき~古希からの出航~」
左から門前喜康さん、田口紀子さん、
今年1月、川柳人の門前喜康さん(西区樫野台)と、己書(おのれしょ・心のままに描く書)師範の田口紀子さん(明石市魚住町)が古希を記念して、書と地蔵画・川柳のコラボ書柳集「きこきここき~古希からの出航~」を出版した。
神戸市立歌敷山中学校の同級生という2人は昨年古希を迎えた。門前さんは本名の「よしやす」から、川柳の雅号では「きこう」と名乗っている。書と川柳を集めた「書柳集」に門前さんがつけたユニークな題名は、田口さんの「のりこ」から「きこ」そして「古希(こき)」にかけ「きこきここき」となった。
サンテレビジョンで報道記者をしていた門前さんは阪神・淡路大震災をきっかけに川柳を詠み始める。震災当時、24時間勤務で震災報道にあたっていた門前さんは、週刊文春誌上で故・時実新子さんの企画による「震災句募集」の文字を目に留めた。すがるような思いで初めて詠んだ句「冬の雲仮設の窓にチマチョゴリ」が入選。このことを機に時実さんに師事。現在は、福祉事業NPO法人ウィズアスで副理事長を務めながら、毎日のようにフェイスブックに句をアップするなど精力的に創作活動を続けている。
一方、田口さんと「己書(おのれしょ)」の出会いはしあわせの村で行われた健康セミナーだった。そこで、たまたま同じくセミナーに参加していた己書の師範、兼子孝子さんの紙ナプキンに描かれた地蔵画を見て田口さんは一目惚れ。その後北海道在住の兼子さんからオンラインで地蔵画と書を学び、1年程で「日本己書道場」の師範となった。己書とは2012年に、快晴軒天晴(あっぱれ)こと杉浦正さんが名古屋ではじめた「日本己書道場」が最初。味わいのある文字を筆ペンで絵のように自由に描く。師範の資格を得た田口さんは「輝々(キラキラ)己書道場」を立ち上げ、個展や筆文字幸座の教室を主宰している。 田口さんは、兼子さんから「お地蔵さんの絵に日々感じた言葉を添えて、まとめてみたら」と提案される。いざ言葉をつくろうとしてもなかなか進まないと思案していたが、ふと、中学卒業後何十年ぶりかの同窓会で再会した門前さんが思い浮かんだ。田口さんは神戸新聞の文芸欄に掲載された門前さんの川柳を目にしており「私の己書の言葉にしたい」と話をもちかけた。田口さんの描く地蔵画を見た門前さんは「せっかくなら70歳を祝って冊子にしよう!」と提案、出版する運びとなった。
第一章を「地蔵に祈る…」と題し、門前さんは地蔵を兼題とした句のほか「きょうの空宅急便で送ります」「おーい雲なぜ堂々とずる休み」など多数の句を詠んだ。川柳から感じた印象を地蔵の表情に込め己書を添えて、全59作品が完成した。 田口さんは自身の母親が入居している有料老人ホームに「夢料(むりょう)」と書いたシールを貼り書柳集を寄贈。「92歳の母が喜んでくれたことが一番うれしい。最後の親孝行になった」と笑顔をみせる。読者からは「どこからでも読める楽しい本」「ほっこりしたり、ちょっと切なくなったり、楽しませて頂いています」「おふたりの思いを勉強させていただきます」などの感想が寄せられた。2人は「書と川柳のコラボという珍しい試みを、お地蔵さまの表情とともに味わい、心の癒しにしてもらえれば」と呼びかけた。 A5判、税込み800円。連絡先は、田口さん(090・8127・8053)まで。