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須磨区

自然環境サミット2022

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2月27日(日)「自然環境サミット2022」が須磨パティオ健康館 パティオホール(須磨区中落合)で開催され、120人が参加し、40人以上がライブ配信を閲覧した。 (主催/須磨FRSネット 協力/須磨区役所)

須磨区内で自然環境の保全・愛護活動を行う15団体から構成される須磨FRSネットは、 「須磨の豊かな自然を次世代に!」を理念に 「自然環境サミット」を毎年開催している。13回目となる今年は「神戸の海の豊かさを守ろう~海苔の色落ちやいかなごの不漁はどうなる?」をテーマに、漁師の森本明さんと尻池宏典さん、兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター元所長の反田實さんを講師に迎え、講演会を行った。

まず、森本明さん(すまうら水産有限責任事業組合代表)が「海苔養殖を続けるために」をテーマに話した。森本さんは開口一番漁業の厳しい現状を訴えた。森本さんは「我々の一番問題になっているのは海苔の養殖と対策です」と話す。色が黒く、肉厚な須磨海苔は、明石海峡の潮流の速さと大阪湾奥の豊富な栄養によりもたらされてきた。須磨の海苔養殖は昭和35年に始まり、最盛期の昭和50年代には約200人が従事。しかし現在は44人と激減したのは、海中の「栄養塩」と呼ばれる窒素やリンの消滅による「海苔の色落ち」にあるという。栄養塩のある海づくりを目指し、海苔養殖を継続するための取り組みを伝えた。

続いて、尻池宏典さん(KOBE PAIR TRAWLINGS代表)が「神戸の漁船漁業の実態」をテーマに、地元小学校への出前授業で使用しているスライドをもとに話を進めた。尻池さんはまず、神戸市漁業協同組合で行われている漁法を紹介。神戸空港から須磨は底引き網漁でヒラメ、シャコなどたくさんの魚が獲れる漁場だったが、今は大量に獲れていたシャコが一匹も獲れなくなるなど苦しい状況にあると伝えた。尻池さんは「魚が獲れなくなった一番の原因は潮の流れが弱まっている」とした上で「親の世代に比べ海の環境変化により魚が獲れなくなっている。その変化に応じて我々漁師も変わっていかないといけない。魚を獲るだけでなく漁師が集まって山や川や畑へ出かけ、何かできないか考える必要がある」と話す。新しい苗木を植える、川を清掃するなどの活動を進めていくと話した。

反田實さんは「豊かな海をもとめて」をテーマに講演を行った。反田さんはまず、「豊かな海とは?」と投げかけた。一般的には澄んだきれいな海がさまざまな生物の生きる豊かな海のイメージがあるが、実はその逆で海の透明度が高くなればなるほど、植物プランクトンの量に影響を及ぼす。豊かな海=きれいな海ではないことを伝えた。その上で、多くのデータをもとに海苔の色落ちといかなごの不漁の原因は海の窒素不足にあることを示唆。1995年にきれいな海を目指して窒素とリンの排水規制や環境基準が改定されたことを機に、海中の「栄養塩」が減少。特に窒素の急激な減少は海苔の色落ちやイカナゴの不漁につながった。「海域の貧栄養化→餌生物の不足→イカナゴの肥満度の低下→産卵数の減少→イカナゴの減少」というイカナゴ減少のシナリオを示した。そこで餌の多い豊かな海への取り組みとして、兵庫県下24処理場で11~4月に放流水の全窒素濃度を高める季節別管理運転の実施をはじめとする国や県の新たな施策や、漁業者が行っているため池(かいぼり、池干し)、海底耕耘を紹介した。反田さんは「瀬戸内海は人々とのつながりの強い海。栄養に富み、色々な生物が暮らせる多様で豊かな海を取り戻し守るために、我々はさまざまな視点から考えていかなければならない」と提唱した。

その後、活動事例発表として、須磨海岸で活動をしているHale Sumaが登場し、古典フラを披露した。最後に「豊かな海を守るためにすること」をテーマに、講演者3人と、「いたやにすと」代表の森忠延さん、「天井川を美しくする会」代表の住本誉さんが加わり、市民として何を行えばいいかなど、総合討論を行った。

司会進行の須磨FRSネット事務局の吉田裕之さん(須磨里海の会会長)は「我々に足りないのは発信力だ」とし、 「神戸は森と川と山、海が身近にあり、その恩恵を受けて生活している。日頃から考える生活や、関心をもつことが大事。地元の魚を食べたり、清掃活動に参加したりするなど、小さな力が集まれば大きな力になる。それを信じて賢く自然を利用する市民でありたい」と締めくくった。

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