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垂水区

「包丁研ぎ少年」河本陽向(かわもとひなた)さん(13歳・垂水区塩屋台)

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「包丁研ぎ少年」としてSNSで話題となり、新聞やテレビで取り上げられるなど一躍有名になった河本陽向(かわもとひなた)さん(13歳・垂水区塩屋台)。 昨年4月、無償で包丁研ぎを始め、研いだ総数1407本!河本さんの夢は「日本の包丁研ぎの技術を広めながら世界を飛び回る冒険家」。この夏、その夢の一歩を踏み出した。

河本陽向さん

「自然が大好き」という河本陽向さんは垂水区在住の中学1年生(塩屋中学校)。幼い頃から火を使ったり薪割りに興味を示すなど、自然の中での暮らしが夢だったという。その思いを叶えたのは小学5年生で参加した通年キャンプ場と呼ばれる、暮らしの学校「だいだらぼっち」での山村留学(長期滞在型教育プログラム・長野県下伊那郡泰阜村)。参加者は1年間親元から離れ、泰阜村の小・中学校に通学しながら10〜14歳の子どもたち20人で集団生活をする。畑仕事・朝夕の食事の仕度・自分たちが使う箸や食器など身の回りの物も自分たちで手づくりするという山村での暮らしの中で、河本さんは地元の職人から陶芸や木工、刃物の研磨などを教わり、道具の大切さを知ったという。

一年間の「留学」を終え神戸の自宅に戻った昨年3月末、新型コロナで学校が休みに。友だちに会うこともできず、家で好きなことをしようと思いたち、手始めに家の包丁を研いでみた。すると、何年も使い込み傷んだ刃は見違えるような切れ味に。大喜びする母親の姿をみて「もっとたくさんの包丁を研ぎたい!」と近所の人に声をかけた。「無償で研ぎます」とフェイスブック(SNS)にも発信。河本さんの包丁研ぎは話題となり、研いだ総数は140本に上った。

右、武田昇さんと

同年6月1日の神戸新聞で河本さんの記事が取り上げられると、それを見た元研ぎ職人の武田昇さん(垂水区霞ヶ丘)が自宅に訪れ「師匠として指導させてほしい」と申し出た。武田さんは、「京の台所」と称される錦市場(京都市)で48年間包丁を研ぎ続けた大ベテラン。「包丁研ぎは正しい姿勢とスピードが大切」と丁寧に河本さんを指導した。以後、僅か1カ月で400本を達成。その後もメディアに取り上げられたこともあり、全国各地から依頼が殺到。高齢者支援施設「星が丘ホーム」(垂水区星が丘)との縁が生まれると、理事長の徳岡八重子さんの働きかけで毎月包丁を研ぎ続け、今年1月29日、ついに包丁研ぎ1000本を達成した。  武田さんは「今のこの気持ちを将来までもてるように」と応援。母親の奈穂さんは武田さんとの〝師匠と弟子〟の繋がりを温かく見守っている。

ここ数年、世界の料理業界では日本製の包丁がブームになっているというが、西洋の包丁に比べて刃が薄く鋼材が硬い日本の包丁は西洋の研ぎ技術では上手に研ぐことができない。

今年の夏、1カ月の北海道自転車旅行を実行したという河本さんのもう一つの夢は冒険家。「僕は世界中を飛び回り、日本の包丁研ぎの技術を広める冒険家になります!」と抱負を述べた。

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