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須磨区

「ことばの道」言語リハビリ多機能型施設 新設オープン

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須磨区北落合で失語症デイサービスを提供してきた一般社団法人「ことばの道」が、4月1日(木)須磨区高倉台に移転。全国初の幼児から大人まで利用できる言語リハビリ多機能型施設を新設オープンした。
3月28日(日)には工事関係者や取引先など約30人が集まり竣工式が執り行われた。29・30日には内覧会が開かれ、利用者や福祉関係者など約230人が見学を行い、新たな取り組みに大きな期待を寄せた。

「ことばの道」代表理事の安居道子さんは、学生時代から福祉関連のボランティア活動を行い、介護保険や障がい福祉の仕事に携わり、2008年兵庫県で初めて言語リハビリに特化したデイサービス施設「ことばの道」を開所した。脳卒中の後遺症などで読み書きや会話が不自由になった失語症の人が一般的なデイサービスに通うとコミュニケーションが困難なため孤立してしまうケースが少なくなく、また、専門職のリハビリを受けることができる環境作りが必要との想いでスタートしたという。病気や高齢化など利用希望者が年々増加、旧施設では対応しきれない状況が続いていた。より多くの人たちの支援に繋がるよう、子どもから大人までの幅広い年齢層を対象とした全国初の言語リハビリ多機能型施設として新たに生まれ変わった。

新築の施設は利用者の立ち位置を考え、手すりやゴミ箱の位置など一つひとつ注意を払い配置。玄関ドアには利用者への想いを込めた言葉や関係者たちの大切にしている言葉を綴り、「繋がりの道=ことばの道」を表現した。1階は発音や脳の機能訓練などのリハビリが行われる部屋と「就労継続支援B型」の作業室がある。作業室ではコーヒー豆の選別から焙煎、パック詰めを行ったり、近隣の保育所から譲り受けたクレヨンでマーブルクレヨンを作製。開発途上国の支援にも繋げていくという。2階は子どもたちの学習室とプレイルームがある。言語の遅れや発音が気になる幼児らに遊びを通して言葉を育む「児童発達支援」や、自閉症や友人とのコミュニケーションが取りにくい小学生から高校生を対象に生活面や学習面で支援する「放課後等デイサービス」を言語聴覚士や作業療法士を中心に機能訓練士が提供する。また施設内には13のトイレを設置。気兼ねなく利用できる配慮と、「大切に想う気持ち」を伝えようと、13それぞれに異なるデザインの壁紙を選んだという。言語聴覚士や作業療法士、看護師、介護福祉士、教員、保育士、介護支援専門員など専門スタッフ約30人が支援する。

竣工式では兵庫県言語聴覚士会の田中義之会長が「地域社会に活性化の材料を与え、地域一丸となって支える施設になることを期待します。そのためには地域住民の皆さんに顔をだしていただき理解してもらうことが必要」と祝辞を述べた。脳梗塞の後遺症で8年前から利用している三木市の髙田徳昭さん(74歳)は「ここでは麻雀や習字、絵手紙を楽しんでいます。おかげでシンプルな考え方になりました」と話した。妻の珠美さんは「行き先がなく大変困っていました。職員さんが明るく元気でコミュニケーションを多くとってもらえるので、主人も明るくなりました。このような施設がたくさん増えるといいですね」と話した。

統括責任者で言語聴覚士の安居和輝さん(33歳)は現在、川崎医療福祉大学大学院博士課程の学生でもあり、失語症者の生活の質の向上を目指して、QOL尺度の開発に取り組んでいる。4月25日の失語症の日にはオンラインイベントを開催するなど失語症の理解と支援の輪を拡げようと積極的に活動している。安居道子さんは「40年間福祉の仕事に携わってきて、生きていく上で選択肢があることはとても大切だと思っている。利用者さんのやりたいことをサポートし、さまざまな専門性をいかして繋げ、希望や勇気や未来のために水輪のように拡がる施設でありたい。踏ん張ります!」と笑顔で語った。

問い合わせ先/一般社団法人ことばの道
TEL(737)6565
FAX(737)6566


竣工式でのテープカット


2階プレイルーム


コーヒー豆を選別する利用者


焙煎したコーヒーは施設で販売も行っている

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