「起業(ゆめ)を形に2021」神戸市立中央図書館2号館(中央区楠町)
2月26日(金)、神戸市立中央図書館2号館(中央区楠町)にてビジネス講演会「起業(ゆめ)を形に2021」が開催された。 講師/日本政策金融公庫神戸創業支援センター所長、中塚博和さん 共催/株式会社日本政策金融公庫・神戸市立中央図書館
同図書館では、国の政策金融機関であり事業の伴走支援を行っている株式会社日本政策金融公庫(以下日本公庫)と平成24年度以降連携。陸海空の交通要所である神戸からビジネスチャンスの芽を発信できるようにと、創業に興味や関心のある市民を対象に毎年ビジネス講演会などを共催している。今回の講演会には22人の市民が参加。同時に1階ロビーでは関連資料の展示も行われた(1月30日〜2月28日)。また3階にビジネス支援コーナーを設置。ビジネスに役立つ企業・業界情報資料やデータベース、白書やビジネス雑誌などを多数取り揃えている。
講師の中塚さんは創業する前に知ってほしい「創業の実態、創業計画書の重要性、創業計画書作成のポイント」をテーマに話を進めた。まず、開業率や開業年齢など日本における創業実態について6つのクイズを出題。参加者が1問につき10秒で解答、答え合わせをしながら創業の実態を伝えた。
日本の開業率は現在4・4%。政府はアメリカ並みの10%台に上げようと、成長戦略の一つとして昨年7月からさまざまな支援策を打ち出している。創業者の平均年齢は43・5歳で40代での創業が最も多いものの、ここ数年は20代の若者や定年退職後の60代が増加。さらに女性や地域社会の課題を解決するソーシャルビジネスの起業も増えている。創業の理由は「これまでの経験や技能を生かせるから」が最も多く、創業時と創業後の苦労はともに「顧客・販路の開拓」だという。平均創業費用は約1000万円だが、介護施設の立ち上げなど費用のかかるものからパソコン1台での起業などさまざま。
起業・創業を思い立ち計画する際には「本当にやりたいことなのか」「できることなのか」「地域社会から必要とされていることなのか」の3要素の重なり合いを自分自身で確認し「創業計画書」を作成することが重要。計画書は金融機関の融資や助成金申請時に必要だが、自分が考える事業構想を整理し、事業化するための課題と「やるべきこと」を明確にするためでもある。中塚さんは「形式ではなく中身が重要」だと説いた。実際日本公庫が行った「2017年新規開業実態調査」でも、創業時に計画書を作成した起業家の業績が良い傾向にあることを示している。「創業計画書作成のポイント」については、中塚さんが実際に相談を受ける中で、商品・サービスの対象が「一般客」と書かれているケースが6割にのぼるが、年齢や男女などターゲットを明確にすることがポイント。
資金調達に関しては、兵庫県では若者・シニア・コミュニティビジネスなどさまざまな切り口の助成金があり、神戸市もソーシャルビジネスの助成や補助制度などがある。自分に合った助成金や補助金はないか情報収集も大切。創業後の黒字化まで平均6・3カ月かかるとされているが資金計画を立てる際には中古品の代替など設備資金を必要最低限に抑え運転資金にゆとりをもたせるなど「小さく生んで大きく育てる」発想が大事。とくに創業時では「売上げの見通しが過大評価に、経費が過少評価になりがち」のため、第三者からの意見やアドバイスを受け、多角的に検証する必要がある。
中小企業、創業者を支援する「産業振興センター」には専門家に何度でも無料で相談ができる「神戸開業支援コンシェルジュ事務局」や「兵庫県よろず支援拠点」もある。中塚さんは「創業後はいいことばかりでなく苦労することも多いでしょうが、ヒアリング調査では創業者の7割が満足しています。想いを実現するヒントとなり満足いく結果になることを祈念いたします」と締めくくった。
「神戸からさまざまな企業が誕生している。やる気とチャンスがあればビジネスを成功させる土壌がある」と同図書館の館長岡田宏二さん。「図書館には資料が豊富にあり、関係機関や地域とネットワークを図って情報拠点としての役割を果たしていきたい」と今後の展望を語った。