須磨海浜水族園 イルカライブ32年の歴史に幕
1957年に須磨水族館として開業以来、スマスイの愛称で親しまれた神戸市立須磨海浜水族園(須磨区若宮町)が、再整備に伴って3月1日から本館のみの営業となる。通常営業最終日の2月28日(日)は最後のイルカライブを見納めようと朝早くから長蛇の列ができ、思い出作りを楽しんだ。
1989年にオープンしたイルカライブ館は、トレーナーたちが「動物が生きるありのままの姿を表現したい」とショーではなく、ライブというスタイルにこだわり人気を誇っていた。再整備に伴いイルカライブ館が閉鎖されることを受け、昨年12月より「THE FINAL~つなぐ2021→2024~」と題したライブに長年の思いを込めた。
最終日、全4回にわたるライブはすべて立ち見客が出る大盛況ぶり。午後3時半、いよいよ最後のライブを迎えた会場は熱気に包まれた。司会進行役の川中真弓トレーナーが客席に向かって「感謝の気持ちを込めて精一杯お届けします!最後の最後まで温かい応援よろしくお願いします!」とあいさつすると、会場から大きな拍手が沸き起こった。ジーナ、クー、マミー、ケイト、ラヴの5頭のイルカたちが躍動感あふれるジャンプやキュートな演技を次々と披露するたびに、会場には歓声が上がった。
オープニングパフォーマンスが終わると、川中トレーナーは「ここからは会場の皆さんに参加していただきましょう。とっておきの思い出を作りたいお客様、手を挙げてください」と呼びかけた。前田悠妃さん(明石市立林小2年)が代表として選ばれ、特別ステージに立ち観客全員とともにイルカたちを相手にゲームをスタート。右手を大きく回すとイルカたちがくるくるまわり、その場で駆け足をするとイルカたちは尾びれをバタバタさせ、最後は大技のジャンプをイルカのマミーが決めるなど50種類あるハンドサインの中で、4つのハンドサインを皆で楽しんだ。
水しぶきをあげるダイナミックなジャンプや、プレゼントボックスを持って立ち泳ぎしながらトレーナーへ渡す愛くるしい姿など、トレーナーとイルカたちの息のあったパフォーマンスに観客は惜しみない拍手を送った。フィナーレではゆずの「また会える日まで」が流れ、観客たちが大きく手拍子をする中でイルカたちは一斉に見事なジャンプを決めた。イルカたちの名前を呼んで紹介すると、5頭は観客に向かって立ち泳ぎしながら、「キーキー」と最後のあいさつをした。
川中トレーナーが「新しく生まれ変わるスマスイのあった場所で、笑顔と感動を築いていきたいと思います。少しだけさよならだけど、また会いましょう!32年間温かい応援ありがとうございました!」と言うと、観客から「ありがとう!」と大きな声があがった。トレーナーや飼育員たちは涙しながら観客に手を振り、観客も感涙し惜しみない大きな拍手を送った。終了後も名残惜しさから席を離れようとしない観客たちにトレーナーたちが歩み寄り、ハグをしたり、握手をしたり、写真を一緒に撮ったりして3年後会う約束を交わし、長い歴史に幕を閉じた。
2歳から13年間スマスイに通い続け、将来の夢はイルカトレーナーという立村桂一さん(市立西代中3年)は「イルカたちは笑顔をもたらしてくれる大きな存在。とても寂しいが、イルカたちに会いにどこでも行きます」と話し、母親の琴美さんと二人で用意した花束をトレーナーたちに心を込めて手渡した。琴美さんは「トレーナーの皆さんは家族のような存在で、息子をここまで育ててくれました」と感謝で目を潤ませていた。家族で訪れたという砂田理恵さんは「世界のさかな館」で展示されている淡水魚で、世界最高齢のロングノーズガーと同い年なので、会いに来るたび励まされたという。「3年後また会おうね」と何度も声かけし、別れを惜しんだと話した。
中垣内浩園長は「これまで多くのお客様にご来園いただき、感謝の気持ちでいっぱいです。本館は引き続き営業をしておりますので、ぜひお越しください。そして2024年春にオープンする新しい水族館に期待してください!」
と熱く語った。
☆3月1日からは本館のみの営業となり、ペンギンや淡水魚などが引き続き楽しめる。
3階にはスマスイの歴史を学べる「スマスイミュージアム」を新設。
【入園料】大人700円、中人400円、小人300円に変更