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神戸市埋蔵文化財センター 「骨考古学、および片山流〜身体史観〜」片山一道さん講演会

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9月20日(日)、神戸市埋蔵文化財センター(西区糀台)にて京都大学名誉教授・人類学者の片山一道さんによる「骨考古学、および片山流〜身体史観〜」の講演会が開催され、抽選で選ばれた市民や研究者など53人が参加した。

片山一道さん

 神戸市埋蔵文化財センターでは7月23日から10月18日まで夏季企画展「骨が語る昔ばなし」を開催している。遺跡から出土したヒトの骨=古人骨に特化した展示は同センターでは初めてで、明石川と伊川の合流地点にある新方(しんぽう)遺跡(西区玉津町新方)などの発掘調査で出土した弥生人をはじめとする骨を「病気や健康」「社会生活」など4つのテーマに分けて紹介している。9月20日(日)は新方人骨の調査研究に携わって来た京都大学名誉教授の片山一道さんを迎え、骨からわかった人びとの歴史や縄文人の実態などについて1時間半にわたり講演を行った。片山さんは「私どもは人呼んで骨屋であり、神戸で発見された人骨については一番詳しい」と自身を紹介。「古人骨は語る―骨考古学ことはじめ」など数々の著書を出している。

古代人の生き方を知るには古人骨を研究する「骨考古学」は大変重要。さらに歴史の主人公である人間の身体が、時代によってどう変化しそこから歴史がどのように動いてきたかを考察する「身体史観」は非常に重要で興味的だという。古人骨からは性別や亡くなった年齢、身長や顔立ち、食べ物、生活習慣、病気など多くのことがわかる。約1万5千から2千5百年前の縄文時代の人々の平均寿命は30~40歳で100年前の江戸時代と変わらなかった。縄文時代は冷涼だった気候が次第に温暖で住みやすい環境になり、人口は5万人から最終的に20万人程度とされ、貝塚遺跡などで人骨が多く残っている。講演では縄文時代の独特な埋葬方法についてや、歯の磨耗の様子から、ドングリやアサリなど堅く砂混じりの食べ物を常食していたこと、歯を抜く奇妙な風習があったことなど「古代人」の素顔にせまった。また海水を常に浴びる生活によってできるサーファーズ耳と呼ばれる外耳道骨腫があることから、縄文人は世界で最古の「海の民」かもしれないと説明した。

新方遺跡第12号人骨

新方遺跡第8号人骨

片山さんには忘れえぬ特別で大切な存在の「神戸の古代人」がある。新方遺跡で発見された「弥生時代人13人衆」とも呼ばれる13体の人骨がそれで、発見された当時、研究調査のため同センター近くのホテルを借り1週間ほど通い詰めたという。片山さんは指輪を6個装着する派手な装飾品を身につけた人骨(12号人骨)を掘り出した。この13人衆は縄文時代から弥生時代への日本史の転換期となった頃の古人骨で、顎が大きい、抜歯など弥生時代の人骨でありながら縄文人骨の特徴を併せ持つ。この発掘からそれまで言われていた定説が覆されることとなった。

来場者で自身も同遺跡調査に携わり、現在は大阪城の石垣発掘調査を行っているという森下武さん(79歳・西区桜が丘東町)は「発掘時のことを思い出しました。見識が広がりました」と話した。学芸員の中村大介さん(神戸市スポーツ局文化財課埋蔵文化財係)は「古代人の人物そのものを知ろうと思えば骨に勝る素材はありません。ぜひ展覧会を観て、そのことを感じてほしい」と呼びかけた。

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