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垂水区

兵庫のいいね!これ、知ってる?編 日本玩具博物館

2020年9月23日号掲載

姫路の私設博物館 日本玩具博物館


大きな凧が印象的な一号館

姫路市香寺町にある『日本玩具博物館』は1974年に井上重義館長が新築した自宅の一部を展示室にして開館。11月で開館46年目を迎える。趣のある白壁土蔵造りの建物は、テーマ別に6号館まであり、館内には国内外の地域の文化が反映された郷土玩具や、思わず「懐かしい!」と呟いてしまいそうな馴染みのある玩具など約9万点を所蔵している。また、ヨーロッパ製の木のおもちゃや日本のけん玉など、触れて遊べるコーナーも充実。家族三世代で楽しむことができる。


触れて遊べる体験コーナー

博物館としてのはじまりは、井上館長が会社員だった頃、仕事帰りによく立ち寄っていた本屋で偶然出会った『日本の郷土玩具』という一冊の本。本には『郷土玩具を文化遺産として残さなければ世に認知されることなく消えてしまう』という事柄が書かれており、郷土玩具を後世に伝えるべく使命を感じた。それ以降、仕事が休みの日には全国各地の玩具作家の元を訪れ交流を重ね、玩具収集を行った。開館は姫路美術館や県立博物館もまだない時代、土日のみの開館だったが、毎週末多くの来館者で賑わった。館長と会社員という二足のわらじを履いていたことから「サラリーマンが創った博物館」と話題にも。開館から10年経った84年には勤めた会社を早期退職し45歳で博物館の運営に専念、後に独学で学芸員の資格を取得。90年には尾崎学芸員が就任し、世界のクリスマスをテーマにした企画展示会などを積極的に行い、郷土玩具に関する出版も手がけるように。今月刊行の『世界の民芸玩具』は、同館が所蔵する20世紀の民芸玩具の中から56種類を選び、鮮やかな写真と解説によって、それらの魅力を伝えている。

『世界の民芸玩具 -日本玩具博物館コレクション』
(2020年9月刊行)
著 者:尾崎織女 (日本玩具博物館学芸員)
出版社:大福書林

 

95年の阪神淡路大震災後には、被災した多くの雛人形の救済活動にも取り組み、その活動から代々伝わる豪華な雛人形や甲冑飾りなどの寄贈もあり、現在同館の貴重な資料となっている。


全国から寄贈される雛人形

また、華やかに展示されている『ちりめん細工』は、着物の材料である縮緬の余りを使用した江戸時代から続く伝統的手芸品だが、昭和の混乱の時期に一度姿を消したもの。具体的な作り方や正確な名称もなかったが、館長監修のもと博物館にてワークショップなどを行い、講師となる人材を育て手芸本の出版を行った結果、全国でちりめん細工のブームが起こる。一度は消えかけた伝統的手芸品を復活させ、現在も各地で愛好者が増え続けている。

2016年にはミシュラン・グリーンガイドの二つ星に認定された。全国でも二つ星の博物館・美術館は30数カ所しかなく、個人立の博物館としては大変珍しく名誉なことである。

「時代の変化とともに、子どもたちの遊び方も変わってきているが、博物館内のおもちゃを手に取って遊ぶ子どもたちの様子は今も昔も変わらない」と館長。来館者はファミリーから研究者まで全国各地から訪れる。普段は外国人観光客も多いが、新型コロナの影響もあり休館した時期も。現在も例年に比べ入館者数は激減しており、閉館の危機に直面している。

11月7日からは特別展『世界のクリスマス〜ドイツのクリスマスを中心に』を開催予定。この機会に家族や友人と足を運んでみては。

 

《日本玩具博物館》
所在地:姫路市香寺町中仁野671-3

電話番号:079-232-4388
営業時間:10:00~17:00
入館料:一般 ¥600 、高校・大学生¥400 、子ども(4歳以上)¥200
休館日:水曜日、年末年始      
※ 祝日の場合は水曜開館
ホームページ:https://japan-toy-museum.org

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