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須磨区

タベモノガタリ株式会社 代表取締役社長 「八百屋のタケシタ」店主 竹下 友里絵 さん

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「八百屋のタケシタ」では朝採れの野菜を農家から買い取り、電車の駅ナカに出店・販売する。神戸市営地下鉄の名谷駅構内で西区の野菜を販売していたが、新型コロナウイルスの影響で自粛し、先月販売再開となった。

左、尾上満里奈さん、右、竹下友里絵さん

「テレビ見たよ!」「帰って来たんやね〜!」再開の数日前に全国ネットのテレビ番組で竹下さんが紹介されたこともあり、野菜を買いに来た客や通りすがりの乗降客からも声がかかる。「ありがとうございます。また始めますんで!」と笑顔で答える赤いハッピ姿の竹下さん。高校の留学生活で感じた世界の食の不均衡から彼女の活動にはいつもフードロスへの意識がある。野菜にはスーパーに運ぶのに都合が良いように、箱にキレイにたくさん詰めるための規格サイズがある。曲がっていたり大きかったり、土が付いていても変わらず美味しく、何より農家が気持ちを込めて作ったことに変わりはないはずなのに、規格外とされたものは畑などで廃棄される。そのような廃棄野菜を除いても日本のフードロスは年間約640万トンにもなるという。

販売する野菜は朝採れで新鮮なのはもちろん、すべて産地訪問し、農家に話を聞いて竹下さんが美味しいと思ったものだけ。そこに規格外という概念はなく「農家の想いと味が基準。全部がオススメで自信作です」と竹下さんは言う。それができるのは、毎朝自らトラックで押部谷と岩岡の農家の集荷場3か所を回り、朝採れ野菜を集荷しているから。「買った野菜を冷蔵庫でダメにしてしまうのは食への愛着の薄れで、それは作り手の顔も想いも見えないから」と竹下さんは言う。売り場の野菜紹介は手描きで、農家の名前を冠した「岡野小松菜」や特徴を捉えた「まろやかきゅうり」など、伝えたい想いと野菜への愛が溢れている。

名谷駅でよく野菜を買うという松井寿子(ひさこ)さん(須磨区友が丘)は「新鮮野菜は他でも売ってるけどここが一番!間違いない!スタッフもみんな本当に感じがいいしね」と太鼓判。珍しい野菜も多く扱うが、簡単な調理法をアドバイスするのがお客さんにも好評で、インスタグラムでも、多数旬の野菜レシピを紹介している。

社員の尾上満里奈(おのうえまりな)さん(24歳)はパン屋でアルバイトをした時、閉店と同時に今まで売っていたパンを自分で廃棄するという行為に食のアンバランスさを感じた経験を持ち、フードロス問題に同じ志を持つ竹下さんに共感して入社を決めた。尾上さんは「農家との距離が近くて顔が見えるような関係が本来の姿だと思っていて、今そういうコミュニティを作っていってる感じです」と話した。

左から、竹下さん、山崎高志さん、苗の準備での協力者、谷井敏朗さん

竹下さん自身も借りた田畑で農作を学び、今年から作物を育てイベントも開催できる場として「タケシタ屋農園」を始めた。技術面では押部谷の農家、山崎高志さんに指導を受けている。先日初めて開催した田植えイベントでは参加者たちと一緒に苗を手植えした。手入れをし育て、10月にはまたみんなで収穫する予定。

山崎さんは「本人たちは気付いてないかもしれないが、熱量を持って生産者の気持ちを伝えてくれている彼女たちから買うことで、お客さんは一層野菜に愛着を感じてくれてると思う」と農家としての想いを話した。

竹下さんは「今後は神戸市内ならどこでもうちの野菜が買えるように、サテライト店舗を増やしていきたい(現在西区では玉津町の『かねよし青果』がサテライト店舗)。7月ごろからは神戸新聞の販売店と提携して一部地域の新聞契約者のお宅に野菜を届けるシステムも始めます」と意気込みを語った。

〈竹下友里絵さん〉  食べ残しを簡単に捨ててしまう国があれば、その日の食に困る人がいるという国もある。啓明学院高校2年生の時に留学したカナダで世界のアンバランスさに疑問を感じ、食に関する問題を意識し始める。関西学院大学に進むが、「食」をもっと深く学ぼうと3回生で神戸大学農学部へ編入。4回生を休学中に食品系企業のインターンシップで経験を積み、昨年の2月、在学中にタベモノガタリ(株)を起業。フードロス削減に取り組む「八百屋のタケシタ」を運営している。現在24歳。

※現在行っている移動販売のルートや、販売についての詳細はHPで確認できる。

竹下さんの個人ツイッター

八百屋のタケシタ HP

八百屋のタケシタ インスタ

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