兵庫のいいね!これ、知ってる?編 赤穂緞通
2020年6月24日号掲載
赤穂の伝統工芸品『赤穂緞通』
緞通とは、敷物用の織物のことで中国から伝わったとされており、鍋島緞通(佐賀県)、堺緞通(大阪府)と赤穂緞通(兵庫県)が日本三大緞通として知られている。
赤穂緞通の歴史は古く、中国の織物に感動したある女性が、約30年間試行錯誤を重ね、明治7年に『赤穂緞通』として商品化。高品質で縁起の良い文様が描かれていることが好まれ、京都の茶人や花人からも評判で、全盛期には海外にも販路を広げた。しかし、第二次世界大戦の影響で数ある工場は閉鎖し、時代の流れによって規模は縮小していく。平成3年、赤穂市により赤穂緞通が伝統工芸として継承されるように後継者育成にも力を入れるようになり、現在20代〜70代の女性約30名が織り手として活躍している。
赤穂緞通の織り機
赤穂市東浜町で工房・ギャラリーを営んでいる池上和子さんは赤穂緞通の織り手の一人。織り手になったきっかけは、池上さんの祖母が赤穂緞通の織元であったことと、誇れる伝統工芸である赤穂緞通を衰退させることなく後生にも伝えていきたいと思ったから。池上さん自身、ものづくりが好きなこともあり、手ほどきを師匠である坂越工房柳田緑さんから教わった。柳田さんの師匠が池上さんの祖母の最後の織り手という特別なつながりもあった。
赤穂緞通の特徴として ①筋摘み(文様を浮き彫りにする)②地摘み(地を平らにする) ③仕上げ摘み という織る以外の3つの工程があり、これらは全て握り鋏を使い表面をカットしていく地道な作業。握り鋏は手打ち鍛冶職人により作られた特別なもの。また一部屋を使ってしまうほどの大きな織り機は、構造を熟知した指物大工が作る。緞通1枚を作る道具にも、さまざまな職人の技術が必要不可欠だ。制作時間は、文様にもよるが、一畳サイズの段通を制作するのに約半年ほどの期間が必要となる。
3つの工程に共通する摘みの作業
仕上げ摘みに使う握り鋏
昔から伝わる文様のパターンはいくつかあり、中央に剣、縁が弓矢の利剣(りけん)の文様は別名『忠臣蔵』とも言われ、赤穂緞通ならではの文様となる。紡ぐ糸も自然な色合いで、デザインも和なテイストのものが多い。「洋室・和室を問わず緞通を敷くことで上品な空間を演出できる。経年変化を愉しみながら、その家の味となるよう代々引き継いでほしい」と池上さん。
東浜ギャラリーでは、緞通の制作とは別に、トランペット教室の講師も務める池上さんは「トランペットの毎日の練習と日々緞通を織ることはどこか共通していて、難しいけれど、やっていかないと進まない正直な仕事。毎日の積み重ねが大切」と言う。時代の波にもまれながら、約145年続いた赤穂の伝統と心を引き継いでいく。
〈伝統工芸 赤穂段通工房ギャラリー東浜〉
兵庫県赤穂市東浜町88
電話 0791-25-1395
時間 9:00~ 18:00(不定休)
HP https://www.higashihama.jp/
※見学は無料。
※見学希望日の3日前までにホームページから申し込む。
※当日または一両日中の見学希望者はTELにて問い合わせを。