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「NPO法人りぐこうべ兵庫」 代表 佐溝 広美(さみぞひろみ)さん

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佐溝広美(さみぞひろみ)さんは、保護犬と里親をつなぎ、橋渡しをする保護活動を始めて16年になる。そして今年、神戸市北区にある実家を改装し「おうちホテル・老犬ホーム あおいそら」(北区有野町)をオープンさせた。(一般の犬も利用可能)写真左から、スタッフの坂本優香さん、佐溝広美さん、弓指葉月さん。

「私は実家のような存在。里親さんとワンちゃんが里帰りできる場所を作りたかったんです」と話す佐溝さん。

保護活動は18年前インターネットサイトで保護犬を引き取ったことに始まる。「3才で健康な子」と聞いていたはずが、実際には7才でフィラリアの末期状態。余命の3カ月を一緒に過ごせただけだった。大きな喪失感の中、自分と同じような人を作りたくないという思いから保護活動をする側になることを決意。そのための勉強と愛犬への想いを埋めるため、動物管理センターでボランティアを始めるが、そこは下の階では譲渡会を行い、譲渡先が見つからなければ上の階で殺処分が行われるという環境だった。そこでの経験から翌年、個人で保護犬の活動を始め2018年「りぐこうべ兵庫」を設立する。

ホテルでの散歩の様子

近年神戸市は、ふるさと納税で動物愛護支援事業へ寄附ができるシステムや譲渡会の増加など殺処分ゼロを目指す活動に力を入れているが、当時は譲渡先が見つかるケースが圧倒的に少なかった。また飼い主自らセンターへ犬を持ち込むことが多い事実に、佐溝さんは心を痛めた。その背景には軽い気持ちで飼い始めたものの、しつけもできず手に負えなくなった状態が多くあるという。他にも多頭飼育崩壊やブリーダーの乱繁殖によるものもある。

佐溝さんのもとに来た保護犬は、ドッグトレーナーでもある佐溝さんがしつけのトレーニングをし直し、譲渡先が決まると「預かりさん」という役目の一般家庭で、生活の練習をする。スタッフ全員が里親でもあり、保護活動の経験者のため譲渡先の里親への審査も厳しい。犬が健全に飼育できる環境なのか、必ず家まで行き面談をするという。譲渡後も年に2回の「里親会」を開催。日ごろはLINEグループでしつけの相談に乗るなど里親とは親戚のような関係性が続く。

里親会の様子

 オープンした「あおぞら」は夜間も無人になることがなく常にスタッフが見守っているので、体調が悪く介護が必要になったペットでも預けられる。「保護犬たちが新しい家族と幸せに暮らす姿を見ていけることがスタッフ一同の喜び。『老犬ホーム』を作ったのは、その先の最期までも考えているから」と佐溝さん。「おうちホテル」では、一般的なペットホテルでは断られがちな噛み癖や吠えの問題があっても預けられる。また乱繁殖により障害をもって生まれたり、飼育放棄された保護犬を社会化するには安心してトレーニングできる場所が必要と考え、今後ホテル内にそういった施設も作る予定。

「犬はいつからでもしつけのやり直しができる」と佐溝さん。「LINEで無料相談を受けているので、飼い始めてから『こんなはずじゃなかった』『預かってくれる所がない』などお困りの飼い主さんは、ぜひ相談してほしい」と話し、最後に「犬や猫を飼う時に、市や民間団体からの譲渡という選択肢も考えてもらったら」と締め括った。

 

〈NPO法人りぐこうべ兵庫〉

寄付金や支援に頼らない、独立型のNPO。理事もスタッフも全て保護犬の里親で構成され、適正譲渡を目指し譲渡先の里親の意識改革にも力を入れている。不要品整理や遺品の整理、仏壇の供養なども行う。

〈おうちホテル・老犬ホーム あおいそら〉

神戸市北区有野町唐櫃192・2  TEL/078(983)7111

〈NPO法人 りぐ神戸兵庫HP〉https://lig-ko be.com/

〈神戸市 健康局生活衛生課 動物管理センター「ワンニャン譲渡会」〉

動物管理センターで飼養保管している譲渡候補犬猫と飼いたい人が直接お見合いして譲渡を決めてもらう事業。里親希望者は、事前に参加申し込みと審査を終了していることが必要。

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