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須磨区

「自然環境サミット2020」市立須磨海浜水族園

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2月16日(日)、「自然環境サミット2020」が市立須磨海浜水族園(須磨区若宮町)本館3F悠ちゃんコスモスで開催され、自然に関心のある親子や自然愛護団体の会員など158人が参加した。

主催/須磨FRSネット

梶木典子さん

須磨の環境保全活動をしている団体のネットワーク「須磨FRSネット」は〝須磨の自然を次世代に!〟を理念に、須磨の自然環境への関心や地域への愛着を深めてもらおうと、「自然環境サミット」を毎年開催している。11回目となる今年のテーマは「自然で遊ぶ!!~子どもたちの外遊び~」。講師の、梶木典子さん(神戸女子大学家政学部家政学科教授)の基調講演と子どもを対象に外遊び活動をする4団体から事例発表があった。

NPO法人日本冒険遊び場づくり協会副代表でもある梶木さんは、IPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)日本支部事務局長も務める。

まず「遊び」について語る著名人の言葉を紹介。「うちの子は、トトロを100回観ましたというお母さんがいますが、観るのは年に1回くらいにして、99回は外で遊んでほしい」と語るのは宮崎駿さん(スタジオジブリ取締役)。梶木さんは「子どもにとって遊ぶとは生きることそのものとも言えるが、現代は国連子どもの権利条約第31条に明記されている『遊ぶ権利』がないがしろにされている」と指摘した。

今の子どもたちは塾や習い事で時間がなく、本年度より小学5・6年生は英語の授業が増えるため、放課後の時間はより少なくなる。子どもの遊びを取り巻く現状は50年前にあった遊びの「サンマ=三間」(子どもが自由に遊ぶための必要要素「時間・空間・仲間」)が絶滅危惧だと話した。身近な公園ではボール遊び禁止など制限のある公園が多い。その結果、子どもの浮き指(足指が浮いてしっかりと踏ん張れない状態)や扁平足、真っ直ぐ立てないなど高齢者と同様に、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)になるリスクが子どもたちに広がっているという。

外遊びを推奨する取り組みとして全国各地に広がる「冒険遊び場」の活動を紹介した。「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーに、プレイワーカーと呼ばれる大人が常駐し、禁止事項をなくして子どもの〝やってみたい〟を実現する。ロープ遊びやハンモック遊び、泥遊び、火を使いパンを焼く、など。さらに車で子どもの住む地域に「遊び」を運ぶ「移動型遊び場」など外遊びの推進と子どもの居場所づくりの普及に努めている。須磨海岸では2005年から10年間プレイフル・サンドアートを展開。大きな砂場は最高の遊具で大人も子どももよく遊ぶ。梶木さんは「砂に勝る遊具はない」と話した。

外遊びは子どもに自律性や有能感、関係性を育て、成長に大いに影響を与える。夢中になって遊ぶことで集中力がつき、試行錯誤しながら工夫しやり遂げたことで自分が好きになり自己肯定感が身につく。梶木さんは「子どもの時にしっかり遊んでいると現在社会で起こっているさまざまな問題も減るのではないか」と」話し、「遊びは社会を救う」と力説。最後に「子どもは、外で遊ぶ・たくさん歩く・しっかりと食べる・よく眠ることが大切。大人も子どもと一緒になってワクワク遊んでほしい。今こそ外遊び!」と締めくくった。

「須磨ふるさと生きものサポーター」山本勝也さん

「森のようちえん すまっこのもり」澤井一紗さん

「横尾自然塾」左、中村利行さん、右、信田ちひろさん

外遊びの活動報告では「須磨ふるさと生きものサポーター」主宰の山本勝也さんが須磨寺での絶滅危惧種のクサガメや旧市街地の生き物と環境などの保全活動を紹介し「須磨の生き物に興味を持ちませんか?」と投げかけた。「森のようちえんすまっこのもり」の代表、澤井一紗さんは、森の中で一日中遊び、自然の中で過ごすということがいかに多くのことをもたらすか、自然環境で過ごすことの大切さを語った。荒れた教育関係の改善に、生きものを採るという本能を鍛えることを目標に、2002年からスタートした、「横尾自然塾」からは子どもを入塾させた信田ちひろさんが、田植えに稲刈り、濃密な自然体験ができるキャンプなど禁止事項のない野外活動を通した子どもたちの成長を語った。

「神戸ライフセービングクラブ」北川真行さん

最後に、神戸市、三木市で人命救助活動を行うボランティアクラブ「NPO法人神戸ライフセービングクラブ」の北川真行さんより、2015年須磨水族園の社会実験「ドルフィンコースト」から生まれた地元小学生との「イルカ見守り隊」によるビーチクリーン活動や、須磨の海がもっと好きになる小学生向けのジュニアライフセービングの活動報告があり「救うことよりも楽しさを伝える試み」を紹介。「海で大人が一緒に遊ぶことで子どものことがわかり、発見も多い。ぜひ大人も遊びましょう!」と呼びかけた。

城本理絵さん、望羽さん、心晴くん親子

初参加の城本理絵さんは、「これまで子どもたちと山での遊びばかりしていたので、海での遊びも広げてみたい」と笑顔で話し、娘の望羽さん(妙法寺小3年)は「川の清掃や海でのゴミ拾いに興味をもった」とはにかんだ。

須磨FRSネット代表幹事伊與田安正さん

須磨FRSネット代表幹事の伊與田安正さんは「須磨の自然に関心のある方が多く集まり、加盟団体の交流も図ることができて成果があった」と笑顔をみせた。

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