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神戸常盤大学 卒業生特別講座「いま話題の〝がんゲノム医療〟とは?」

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2月22日(土)、神戸常盤大学(長田区大谷町)にて、卒業生特別講座「いま話題の〝がんゲノム医療〟とは?」が開催された。今年から保険適応となった「がん遺伝子パネル検査」。ドラマ化もした医療漫画「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」で、キャラクターのモデルとなった臨床検査技師が、いま話題の「がんゲノム医療」について解説した。 主催/神戸常盤大学地域交流センター

「がん」はさまざまな遺伝子の異常が積み重なることで発症し、その遺伝子の異常は患者ごとに異なることが近年の研究で判明してきている。 がんゲノム医療とは、がんが発生した臓器を治療する従来の方法ではなく、がんの原因となる遺伝子の変異に基づいて診断・治療を行う医療で「がん遺伝子パネル検査」とよばれる遺伝子検査で調べる。

一人ひとりのがんの原因を遺伝子レベルで知ることで、治療薬や治療方針の選択に役立ち副作用の軽減や症状緩和が期待できる。検査の結果有効な情報が得られない可能性もあり、解析できても必要な薬を海外から取り寄せないといけない場合、高額な医療費が必要になるなどもどかしい結果もあるが、現実にがんゲノム解析結果に基づいた治療により施行後のうち12・7%の患者の、がんの73%が抑制されるなど治療の効果が期待されている。

講師の柳田絵美衣さんが勤務する慶応義塾大学病院では、検査技師である自身が直接患者と向き合って医療面接をすることもあるというが、講演の最後の質問コーナーでは参加者から「患者との接点はメリット、デメリットはあるのか?」との問いかけがあった。柳田さんは「患者を目の前にすることで、検体がモノではなく人であると実感します。検査前の情報など患者本人の背景を知ると検査時のDNAの状態や検査方法などの予測もでき、何よりも早く調べないといけない、という思いに駆られます」と話した。通常検査技師は患者本人との接点がない分、面接では緊張するというが、どうしたら患者の不安を和らげられるかという点を心がけて対面するという。

現役学生からの「学生のうちにやっておいた方がいいことは?」との質問には「学校で習う基本的な技術をきちんとマスターしておくこと」ときっぱり。そして「患者の検体をどう扱うか、学生のうちから『検査』させて頂くという意識を持つこと。また医療系は英語は必須なので英語の勉強も忘れずに」と応えた。  「授業でゲノムの講義を受けたところでした。実際に現場で勤務する先輩から話が聞け現場の様子がよく伝わりました」と川井美咲さん(同大学2回生)。長田区から参加した山下千賀子さんは「知人がゲノム治療を受けたので、検査の流れや背景がわかり勉強になりました」と関心を示し、尾形美保子さん(須磨区)は「検体をモノではなく人として、という言葉に共感しました」と話した。

柳田絵美衣さん

〈柳田絵美衣さん〉  神戸常盤短期大学衛生技術科(現神戸常盤大学・保健科学部医療検査学科)を卒業後、病理検査会社を経て、神戸大学医学部附属病院病理部に勤務。病理標本を製作し、染色方法を開発。技術向上への貢献が評価され平成24年、優れた病理検査技師に与えられる第4回サクラ病理技術賞奨励賞を最年少で受賞。友人を大腸がんで亡くし、がん患者の役にたてる臨床検査技師になりたいとがんゲノム遺伝子(ゲノム)解析の検査、研究に転身。現在は慶応義塾大学病院検査技術室ゲノム検査室に勤務。

※ゲノム/遺伝子をはじめとした遺伝子情報の全体を意味する。ゲノムは体をつくるための設計図のようなもので、一人ひとり違っている。

※「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」原作/草水敏、漫画/恵三朗による日本の漫画。2016年1月期にフジテレビ系にてテレビドラマ化された。

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