太山寺「追儺式(ついなしき)」
1月7日(火)太山寺(西区伊川谷町)で「追儺式(ついなしき)」が行われた。
市内唯一の国宝建造物である太山寺本堂内において1月1日~7日まで行われる修正会(しゅしょうえ)の結願法要として、毎年1月7日に追儺式が執り行われる。木彫りの面を被り鬼に扮して松明(たいまつ)を手に勇敢に踊り、悪霊退治をするという安土桃山時代より伝わる伝統行事。「鬼やらい」とも呼ばれる。
住職から「国家安穏、五穀豊穣、万民豊楽(ばんみんぶらく)を願う行事です。今から鬼が登場しますが悪者ではなく、仏様を守り厄を払って福を招くめでたい鬼です」と説明があった。
追儺式の手順は、鬼が山から里に出てきて、また山に戻っていくことを表現しており、樫の木を結び付けている左右2カ所の出入り口を山と里の境目と見立てている。最初に登場したのは子どもの鬼「子鬼」5人。舞は4人が2人ずつ向き合い、太鼓の音に合わせて樫の棒を打ち合わせる。次に登場したのは青年の鬼「走り鬼」。松明と杖を持ち、走りの所作を軽やかに舞った。続いて力強い太鼓の音と法螺貝が鳴り響く中、大人の鬼「三つ鬼」3人が姿を現した。この鬼は3兄弟で長男が喜びを表す笑いの「太郎鬼」。次男は泣き虫の「次郎鬼」。三男は暴れん坊で怒りの「婆々鬼」。左手に松明、右手にはそれぞれ斧・木槌・木製の太刀を持ち、太鼓の拍子に合わせて四股を踏み、かがみ腰や足踏みなど勇壮に踊って悪霊を退治。その雄々しい姿に観客からは歓声が上がり拍手の音が響き渡った。またカメラに収めようと盛んにシャッターを切る人も多かった。
子鬼、走り鬼、三つ鬼がそれぞれの舞を順々に繰り返し、「餅切り」が行われた。柱の上に掛けられた餅を道具で突き、式が終わると境内で餅まき。観客らは福をつかもうと懸命に手を伸ばしていた。西区糀台から3歳の娘と初めて訪れた井元あかねさんは「たくさんのお餅をもらえました。家族全員健康に過ごせるように願った」と話した。
最後に年男と年女限定で大きな鏡餅を賭けたジャンケン大会が開かれた。見事、勝利した垂水区松風台から毎年夫婦で訪れているという田辺三千雄さん(84歳)は「新年早々うれしいですね。厄災を払ってもらい、今年は今まで以上にいい年になりそう」と喜んだ。