滝川第二中・高演劇部『防空壕のはなし』

滝川第二中学校・高等学校(西区春日台)演劇部は1997年に創部し、これまで全国大会に4度出場した強豪校。現在は高校生13人、中学生9人が在籍している。昨年12月20日(土)に、明石市立西部市民会館(同市魚住町)で4年ぶりとなる、地域の人々向けの外部公演を行った。
上演作品『防空壕のはなし』は現代と戦時中が交錯し、現代に集約していくという戦後80年の節目に合わせたオリジナル作品。現代の女子高生サヤハは、校舎階段下の倉庫前を陣取り「自主放送部」と称して勝手に部活動をしている。あるとき、戦時中に19歳でアナウンサーになったヨシノの手記を手にする。クラスメイトから距離を置き、居場所を求めて階段下の一角に身を潜めているサヤハと、戦時中の戦意高揚から刻々と変化するラジオ放送の内容やヨシノの防空壕での生活、現代と過去のシーンが交錯し、2人の葛藤や思いも重なり合っていく。
脚本は顧問歴23年目で落語作家としても活躍する井口守教諭が部員たちと手掛けた。すべての役は部員のキャラクターを生かした「当て書き」で普段の様子からイメージを膨らませるという。井口教諭は「コミュニケーションや自己表現が上手くいかず、閉塞的な思いを抱える現代の高校生が満たされない『空虚さ』を埋めるための居場所が、『空』からの爆撃を防ぐ防空壕のように感じた」と表現する。さらに今回の執筆にあたり、東京のNHK放送博物館に数回訪れ、玉音放送(昭和天皇が自らラジオで国民に終戦を伝えた放送)などラジオ放送に関する学びから着想を得て、より深みのある脚本に書き上げた。
また、同部では戦後60年(2005年)、70年(2015年)に続き、今作品(2025年)と節目の年に戦争にまつわる上演を行っている。「平和な生活が一瞬でなくなる戦争について、高校生だからこそ伝えられることがあるのでは」との思いを込める。サヤハの担任教師を演じた部長の高瀬朋香さん(高2)は「しんどくて辛くなる時もあるけど、いつかは明るい未来が待っている。希望を持つことの大切さを、この作品を通じて伝えたかった」と話した。
舞台セットとなる校舎階段下の倉庫前は同校の実在する場所を再現した。出征したヨシノの兄を演じ、舞台監督としてセットの制作を担当した江口真之さん(高2)は「ケガがなく安全であることを第一に、細部までこだわった」と力を込める。大会では舞台設置と撤収を10分以内に行う必要があるため、階段は組立式で強度を保ちながらコンパクト収納を可能にした。さらに移動を容易にするための持ち手や、倉庫の扉を開閉させ演者が待機できるスペースを確保するなど工夫を凝らし、アイデア満載のセットを完成させた。地区大会では最優秀賞に加え、舞台美術賞も受賞した。
全国大会を目指し、作品の構想を練っていた昨年6月に高2の修学旅行と県大会の日程が重なっていることが判明。県大会出場が決まっても出場できない2年生と、先輩と一緒の舞台に立てない1年生はこの状況に涙した。井口教諭からダブルキャストで、地区大会は2年生、県大会に勝ち上がれたら1年生、近畿大会では両学年の芝居に作り直すという案が提案された。2パターンの練習は多くの時間を費やし、1年生は人数が足らず男子の役を女子部員が演じた。惜しくも近畿大会出場は逃したが、県大会と今回の外部公演の会場が同会場だったこともあり、本来舞台に立ちたかった2年生メインの部と1年生メインの部の2公演を上演。中学の部員は音響などで参加した。
当日は2公演で延べ300人の来場があった。唯一キャストが変わらないサヤハ役の上野清葉さん(高1)は「セリフの奥にある心情を細かく理解することを大事にしている。役と自分の気持ちの通ずる点を見つけることでリアル感が上がる」と役を突き詰めて見事に演じ切った。本番を終え「思い入れの深い作品なので、心の深い部分で受け取ってもらえていたら光栄です」と語った。

