出版「ぼくの名前はトラ 震災を駆け抜けたノラ猫」

啓明学院中学校・高等学校(須磨区横尾)の数学教諭、宮寺良平さんが教え子とともに、絵本「ぼくの名前はトラ 震災を駆け抜けたノラ猫」(発行/みらいパブリッシング)を出版した。
絵本の主役は阪神・淡路大震災を生き抜いた1匹の猫「トラ」。トラの生きざまやトラに関わった人たちとの交流について宮寺良平さんが物語を書き、絵は宮寺さんが関西学院高等部で教鞭を執っていた時の教え子、本庄以知子さんを抜擢し作画を依頼した。
トラと宮寺さんの出会いは震災から20年以上経った2019年頃のこと。趣味のランニングをしている際に通りかかる熊山公園(中央区熊内町)でたびたび出会う猫は、毛並みや動作から高齢と推測できたが、堂々としている印象。震災後、長く公園で生活していたトラのことは地域住民がそれぞれに気にかけ名前を付けていたため「トラ」のほかにも「ミー」「長寿さん」「隠居さん」と複数の名前で呼ばれていた。餌をもらったり寒さ対策をしてもらったりと地域の人に愛されているトラは、宮寺さんの目には人を信頼しているように映った。
絵本のストーリーは、トラと地域の人との交流を見て「おそらく震災前までは誰かに飼われ可愛がられていたのでは」と浮かんできた考えをベースに、震災の前後で一変してしまったトラの環境をトラの視点に立って描いたもの。多くの人、生き物の運命を変えた震災後も、たくましく生き抜いたトラに敬意を込め、震災から30年の節目に本にすることを決意した。作画した本庄さんは、今回の絵本のイメージに合うように幼少期に読んでもらった絵本を見返し、動物や人物の表情などを工夫したと話す。
宮寺さんは2021年秋頃からトラを見かけなくなってしまっていたが、この絵本の制作を聞いたトラの晩年を知る人から連絡があり、その後のトラについて話を聞く機会に恵まれた。トラはある高齢女性の家に暮らすようになり、愛情を受けて約2年間を過ごしたという。「公園で暮らしていた頃はガリガリに痩せてしまっていたこともあったトラが、恵まれた生活を送り、晩年を幸せに過ごしたことを、当時のトラを知る人やたくさんの人に伝えたい」と宮寺さんは語った。晩年のトラのことを話した女性が「こんな小さな生き物のことを心にかけて、絵本にしてくれたことがとてもうれしい」と感謝を添えてよろこんでくれたことも宮寺さんの心に残っている。

震災後、公園で暮らしていた頃のトラ

晩年、高齢女性の家で愛情を受けて暮らしていたトラ

絵は本庄以知子さんが「自分らしく」生きた猫を存在感のあるタッチで描いている